2003年5月 発行所 「50カラット会議」
50カラット会議レポート
35号
快眠を求めて
50代になると、睡眠の大切さが身にしみます。 「すっきりした目覚めに通じる眠り」は、目を休め、脳を休め、 体を休めてくれます。
けれど、あの爆睡はどこへ?と懐かしむ人は、意外に多いもの。更年期の入口で、眠れない! ぴったり2時間置きに目が覚めるという不眠が始まって、もう10年ひきずりましたという人も。
眠りが浅かった翌日は、お化粧はのらず、気力はイマイチ、ランチのあとは、ドッと押し寄せる睡魔との闘いになると嘆きます。 不眠の原因は、更年期以外にも、ストレスからトシのせいまで、いろいろですが、対策もまた多彩を極めます。 眠れぬ夜に、ふとんの中で本を読んだり、テレビを見たりしたいからと、夫婦別室を求める傾向もあるのだとか。
眠れる体になる食生活へのアドバイスもありました。
蛇の道はヘビに聞くシリーズ㉜
不眠談義
更年期の「入眠困難」にも慣れて、ラジオ深夜便の聴視者ですと笑うのは、店舗プロデューサーの安達みゆきさんと建築家の貝塚恭子さん。東洋医学を使ってマッサージをして不眠症に悩む人にも接している高橋順子さんは、ご自分も十代から眠れない夜に悶々としたといいます。比較的よく寝ていますと言いつつも、寝る時は頭を空にすることを心がけるセラピストの大野美都子さん、イタリア式食生活がいいみたいと不眠知らずのハーブ研究家・北村光世さんが集まりました。息をもつかせぬ2時間余の不眠談義です。
目次
1.眠れないって、こんなこと。挨拶も、「元気?」「眠れないの」
2.「眠れない」には、訳があります。
3.不眠対策は、心おだやかになることから。
4.同室の人に遠慮せず、不眠の時を過ごしたい。
5.スローフード生活は、快眠に通じる
1.眠れないって、こんなこと。挨拶も、「元気?」「眠れないの・・」
夜眠れないツケは、結構大きいのです。困るのは、ランチのあとの眠気。
自分の体がコントロールできず、イライラもつのるばかり。
いくら疲れていても、うまく寝つけない・・・
➡昨日もそうだったと、気持は焦る。眠ることばかりを考えると、目は冴える。それに10年つきあって、過ごし方も身に付いた。
眠りが浅くて、熟睡できない。 ➡ぴったり2時間置きに目が覚める。車の中や妹の家のソファで、騒音にもめげずグッスリということもあるのに、どうして?
遅く寝ても早起き。これ、トシのせい? ➡朝方トイレに立っても又眠れてたのに、夜明けに目覚めて、もう眠れない。ご主人から「トシだよ」と言われて、そうか!
「人間は、疲れたら眠るはず」なんて言わないで。
「まだ爆睡」と、今回のテーマに無縁の方も、いらっしゃることでしょう。 けれど、眠れないというのは、人生設計に関わる一大事です。
中でも、更年期が原因の場合は、眠り不要のパワーマンにつかまったと思って、 上手なつきあい方を探るだけの日々。「疲れたら眠れるはずは、楽観的すぎる!」と、振り返るのは、安達みゆきさんと貝塚恭子さんでした。
かと思えば、不眠症というわけではないけれど、あれこれ考えては眠れない夜を過ごす体験は、誰にも頻繁にありました。 「もう少し、やり方があったのでは」と、仕事を振り返る夜があります。 「あんな言い方をしなければよかった」と、悔やむこともあります。 「明日、一番で電話して謝ろう」と決めて、それでも鬱々とした夜がありました。 明日の肌を心配している内に眠ってしまうこともありますが、いっそ本でも読もうかと活字に向かえば、目の疲れにも気づいて愕然の50代です。
なんとか、5時間は眠りたい。
□ 車の助手席では眠れるのに・・・
もう15年も不眠と付き合ってきた安達みゆきさんは、最近の回復は夢のようと、長い歴史をこう語りました。
「眠りが浅くなって、おかしいなというのが不眠の始まりでした。そんな状態が2年ほど続いて、友人のお母さんから分けていただいた睡眠薬を使ってみたりもしました。 それでも回復する様子もなく、これは体のどこかが悪いというより、体の変化によるものではないかと思い始めたのです。
そして更に数年後には、いよいよひどくなりました。眠れない、眠れないの日々です。眠れないので、体のあちこちは痛むし、すべてのバランスが崩れていきました。 睡眠薬は飲みたくないけれど、飲まないと仕事にならないという状態が何年か続きました。ひどい時は、眠れなくてもしょうがないかと開き直ってみましたが、午後からはお茶を飲まないとかの努力の甲斐もなく、自分の体のコントロールがきかないことに、ガタガタになる自分が分りました。
アルコールも効きません。これ以上飲んだら中毒になりそうという位、いろいろ試しましたが、ダメでしたね。 元気?と聞かれると、眠れないのが私の答えだった時期は、長かったですねぇ」。
□ 寝付けないし、眠っても、ピタリ2時間おきに目が覚めます。
12.3年前からこんな具合と、深刻なのは、建築設計家の貝塚恭子さんです。 「もちろん、9時過ぎにはお茶やコーヒーは飲まないようにしていました。入眠剤を飲んだこともあります。でも、薬での睡眠は、次の日が爽やかじゃない。目覚めもスッキリしません。体を休ませなくちゃと思うし、7時間くらいはベッドに入っているけれど、眠りに入っても、2時間で目が覚める。時計を見ると、きっかり2時間なんです。 特に、頭を使った日ってだめですね。それでも、この頃は、気にならなくなりました」。
□ 10代から不眠に悩まされた高橋順子さんは、今はぐっすりです。
「小学生の頃から中学3年まで苦労しました。眠ってしまえばよいのですが、眠るまでが大変だった。ひどい時は、ウトウトすると、心臓の動悸が激しくなって、体が寝かせてくれない。ずっと、そんな風でした。寝たふりして、親の話なんか聞いていて、ろくなこと考えなかったですね。人はどうして死ぬんだろうとか、死ぬって暗い中にいるんだろうかとかね。不眠症は、40歳くらいまで続きました。
結婚して、子供を産んで、いつのまにか、枕に頭がついたとたん眠っているようになりました。自分の中で、生きていくことに対して、安心感ができたということでしょうか」。
□ あれこれ考えて、目が冴え渡る夜も辛い。
仕事のこと、家族のこと、考えだすと眠れなくなるというのは、人間誰しものようです。その上最近では、日の出前に目が覚めるということまで体験しています。 「あれ、どうしたんだろう?」といぶかれば、ご主人から「そりゃ、トシだよ」。 夜中や明け方近くのテレビショッピングにはまったという男性の話を思い出しました。
2. 「眠れない」には訳があります。
更年期症状としての入眠障害不眠は、時期がこないと終わらない。
頭・脳の疲れからの解放は、自分を責めないことがコツと思いつつ、中々上手くいかない。
●体を使わない生活しています。
仕事場でも、確かに体を動かす量は減っています。家事に力仕事はなくなったし、今更スポーツはという人も多いのです。
●気疲れした日は眠れません。
その日の仕事や人の一言が気になって眠れない夜があります。考えるのを止めようとすると、なお眠れません。
●更年期の不眠にお手上げ状態。
体も気持ちも思うようにならないのが更年期。ホルモンのいたずらには、あきらめて付き合う態勢です。
●環境のストレスも多いこの頃です。
街の光や音も、知らぬ間に、ストレスにつながっています。眠れない時は好きな曲さえもだめ。神経を目覚めさせます。
睡眠の大切さは、身にしみています。
「5時間寝られると、肌も安心、仕事にもすっきり立ち向かえる」と、5時間寝られた日の喜びを語った人がいます。
3時間の睡眠では、肌にも髪にもツヤがなくなりますし、お化粧ものらない。不眠がそのまま外見のキレイと気力を削いでしまうことは、誰も体験済みです。 「小食の人は、大食漢より睡眠時間が少なくて済むのよ」との声には、眠れなくて食べたという経験を思い出して、複雑な心境になりました。
けれど、これは本当です。食べれば、その分内臓が働くわけで、食べ過ぎるとその分内臓が疲れるので体が休息を求めるのです。
「仙人とか、修行僧って、少ししか食べないから、あまり眠らなくてよかったの」という話まで飛び出しました。
「眠る」ということは、体を休め、脳を休め、目を休めることですが、眠れなくなる条件もたっぷり揃っているので、健康管理の一大テーマです。不眠歴15年の安達みゆきさんは、「更年期の不眠は、仕事の仕方を変えたりと、強いて言えば人生設計にも、大きな穴を開けました」と振り返りました。
ストレス・更年期・トシのせい・・etc.
□ 社会に生きていれば・・・
人間関係は、楽しみな分だけ、お互いを思いやって生きているので、気疲れします。でも、それだけではないそうです。東洋医学に基づいて鍼灸とマッサージをしている高橋順子さんは、生活環境が原因で体に出るストレスに注目しています。 「音であるとか、臭いであるとか、空気の悪さとか、車の多さ、人ごみなど、自分では気にならなくても、体が拒否していることが沢山ある。満員電車での通勤は、慣れたと思っていても、体が嫌がっているのよ」。
確かに、以前は人ごみも上手に泳げたのに、この頃上手く人の流れに乗れないことがあります。そんなこんなで、ストレスは溜まるばかりです。
眠れないというのは、ストレスからのサインなのです。
□ 更年期の入眠障害は、ホルモンのなせる業。
「ホルモンというのは、微量で体を支配してしまう。抗いがたいですね」と、高橋順子さんも言われるとおり、スポーツクラブでの運動努力も効果がなかったと、安達みゆきさんは振り返ります。
「睡眠がとれなくなると、スポーツクラブに入るという人は多いですね。私もクラブに入った時、睡眠が取れないからと訴えました。その時、運動すれば眠れるようになるって訳じゃないって言われました。実際、日々泳いだり運動したりしましたけれど、ダメでした」眠れない、眠ろうということを目標にすればするほど、眠りから遠のいてしまう状況は、ほんとうに大変だったろうと、一同同情しました。
□ そんなに寝なくなりました。トシのせいかな・・・
子供は8時には寝るものと育てられて、大学時代になっても、8時間寝たかったというのは、イタリア食文化研究家の北村光世さんです。
「ところが、年齢のせいか、眠りが浅いというのでもなく、そんなに寝なくなるという状況 になりました。社会人になって以来、仕事の多い少ないで、不規則な生活をしてきましたが、大体はよく寝てきたと思う。それがこの頃、そんなに寝なくてもスッキリしている。トシのせいかな」と、微笑みます。
高橋順子さんも、同様です。 「食がシンプルで少量の人は、3時間くらいの睡眠で大丈夫なの。仙人とか、修行僧は そんな風。食べる量が少なければ、消化吸収排泄という作業に使う内臓のエネルギーが少なくて済むからというのが理由。よく食べていた頃は、最低8時間は寝ていないと、翌日ボーッとしていましたが、最近は、お夕食なんか控えたら、本当に3時間くらいで目が覚めちゃう。寄る年波です。トシとったなって、思いますよ」だそうです。
□ 体が硬いまま、ベッドに入ると、体は緊張したまんまです。
寝て、肩がこることがあります。これは、寝る前に体をほぐさなかったからだそう。ストレッチするとか、腹式呼吸するのも、筋肉をほぐしてくれるようです。お試しを。
3.不眠対策は、心穏やかになることから。
不眠対策
考え始めると、眠れなくなることは多い。老化が原因で始まる「夜中の目覚め」には独りの自由時間を楽しむつもりでラジオがいい。目も疲れず、周りにも迷惑がない。
①気になることは、解決してからベッドイン!
目の前の座布団に相手を座らせたつもりで、思い切り言いたいことを言ってみる。自分を責めないで、白黒つけると、すっきりしますよ。
②副交感神経を働かせて、無心になる。
頭皮をマッサージ、深呼吸、ぬるいお湯で入浴、覚えられないメロディの環境音楽、アロマテラピー
⓷お酒,誘眠剤、睡眠薬のお世話にもなりましたが、人にはお勧めしません。 アルコールは、眠くはなるが眠りが浅く疲れが残る。カフェインのないハーブティはいかが?
脳に一番近いのは、嗅覚です。 香りでリラックスは、楽しみも広がりそう。
嗅覚は個人差が大きいというけれど、脳に一番早く届くといわれています。リラックス効果のある香りを含んだオイルを、枕元に一滴落としたら、久々に ぐっすり眠れたという人もいます。であれば、疲労回復効果のある草花やハーブのアロマを使った「ボディマッサージオイル」や「ボディローション」、頭皮マッサージもできるアロマ入り「シャンプー」や「リンス」、就寝前の「誘眠アロマ入り入浴剤」も欲しくなります。
香りと同様に注目しているのは、環境音楽です。「モーツアルトが好きだからって、聴いていると眠れないのね。好きな歌手の歌もだめ。口ずさめちゃうような音楽は催眠には不向きです。決してメロディを覚えられないようなのがいい。環境音楽って、鳴っているなぁというぐらいで聴いていられる優れものです」と、お奨めです。ま、誰かに悔しい思いをした日の夜は、香りや音楽を思いつかないかも知れません。そんな時は、その人を座布団に座らせたつもりで、思い切り罵倒するとか、説教するのも、一同からのお奨めです。
睡眠術って、リラックス法です。
□ 気になって眠れない!
高橋順子さんの患者さんへの対処法の1つをご紹介します。 「対人関係での悩みは、紙に書いてもらう。文字で書くってことは、事態が明白になるんです。さもなければ、気になる相手の似顔絵描いたりして、バカヤロウ!なんて書く。その紙をグシャって丸めて、思い切り遠くに投げさせる。さっぱりするようです。 頭の中にあることを、ただ考えていると、こんがらがるだけって場合、多いでしょ」。 心理カウンセラーの大野美都子さんも、「考えていて、どうしても眠れない時は、要するに、誰に何を言いたいかをはっきりさせることが大事ですね。寝られなくて、ひとりで苦しい思いをする時は、トコトン気の済むまでやるっきゃないですから。
文字で書いて、投げ飛ばすというのもいいけれど、もっとやるんだったら、座布団を目の前に置くんです。そこに座らせた相手を思い浮かべて、言いたいことを声に出して言う。座布団を投げ飛ばしてもいい。そんな時は、トコトンやらなきゃだめです。そのあとは、スッキリします」。「それはいいわぁ!」と、喜んだのは建築家の貝塚恭子さんです。 「更年期で眠れないってこともあるけれど、仕事上で、ふとんに入ってからも気になることってありますよ。それも、自分が原因で問題になることもあって、そうすると、朝になったら電話して謝ろうとか、まずあそこに電話してとか、相手が悪いことばかりじゃないから、ますます眠れなくなってね。自分を責めちゃうと、眠れないですね!」
大野さんは、「そうよ。自分を責める気持ちがある時も、必ず相手に伝えたい主張ってあるんです」と、援護の発言です。
□ 頭皮マッサージも、お奨めします。
不眠に悩む時期でも、美容院ではガクッと眠る安達みゆきさんでなくても、美容院で、ぐっすり眠った体験は、みなさんお持ちではないでしょうか。
高橋さん直伝のマッサージ法は、こうです。 「両手で頭を包むようにして、触っていると、ペコッと凹んで、押すと気持ちいい場所があるから、もんであげて。スクリューみたいにやってもいいし、やり方は自由。マッサージをする時は、手が疲れないように、テーブルでするなら、肘をついて。腕や肩を緊張させないように、寝ながらするといいですよ。会議中でも、考えているふりして、マッサージをどうぞ」。
□ 究極の枕?
「テンピュールっていう、NASAが開発した枕。スポンジに似てスポンジじゃない。体の形と重さを受け止める枕」と、絶賛するのは、高橋さんと安達さんです。扱っているデパートでは、15分間試せる仕組みがあるし、京王プラザホテルには、その寝具を使った部屋があって、指定できるのだとか。 しかし、枕は、その日の体調によっても、ほどよい高さ低さ硬さ柔らかさがあります。
店頭での15分間のお試しでは、不安も残ります。「枕も、1万円とか2万円するでしょ。一晩とか、一週間とかのお試しができるといい」。
枕が選べるホテルというのは、お試し場所としては、とてもよさそうです。
4.同室の人に遠慮せず、不眠の時を過ごしたい。
同室の人への遠慮
①電気がつけられない。 寝室の照明は、難問のようです。となりで寝ている人への迷惑は、照明だけでなくテレビの画面の明るさも大問題。別室を考える瞬間です。
②音を立てられない。 イヤホーンで聴くことが習慣になっている人も、テレビは光を遠慮して、ラジオ派になっています。新聞を広げる音も、気にしだすと気になるもの。夜中の読書も遠慮です。
⓷動きまわれない。 布団の中で悶々としていっそ起きてしまおうかと思う時があります。パソコンに向かおうか、お茶でも飲もうかと思いつつ、布団の中です。
➡昔は、自分のふとんをズルズル動かして、 同室の人との距離を調整していました。 ところが、最近はベッド。 テレビは、明かり代わりになるほど光って片方が見ていると、目覚める始末です。
ふとんの文化・ベッドの文化
「50代後半の方からの夫婦別室要求って多くなりました」というのは、建築家の貝塚恭子さんです。
ふとんを離して敷こうが、ベッドを二つに分けようが、眠れない時に相手を目覚めさせずに過ごすのは、中々難しいというのが、その理由です。 「もともと日本の寝具は、一人用にできていたし、大の字に眠るのが幸せの表現だから、一緒に寝るのにはムリがあるのよ」と誰かが言えば、「けれど、子供の添い寝で味わったあのぬくもりは、安心感につながるわ。夫婦が同じベッドに寝るのは、精神的にもいいはず」という意見もでました。アメリカやヨーロッパの二人用ベッドは、キングサイズで大きいから、向こうとこっちで、別々に読書も可能。日本では、部屋にあわせてダブルサイズがせいぜいですから、動いただけで相手を起こしてしまいます。
迷惑とか遠慮とか考えると、「別の部屋に移動」が、結論なのでしょうか。
どんな風に眠りたいですか?
□ 眠る場所を完璧にと改造したのは、安達みゆきさん。
「それで眠れなかったら、眠る環境じゃないという位にこだわりました。 一番こだわったのは、ベッド。マットレスやデザインはもちろん、幅も、90cm、1m、思い切って120cmにしようとか、寝る時には何の大変なこともないように、環境を整えることから始めました。
音響器具やテレビ、遮光カーテン、マイナスイオンの出るエアコンなどにも配慮して、更年期のすべてが安らぐ状況に変えました」。
□ 自分の個室がほしいと、夫婦別室に踏み切りたい。
建築家の貝塚恭子さんのもとには、これからの15年、20年の暮らしに向けて、自分の個室を望む要望が届くそうです。「これまで、リビングの隅を自分のコーナーにしていた主婦たちも、夫との生活時間差を考えて、夜の自由な時間を過ごす部屋を求めるようになったんですね。
その部屋を寝室にもして、のびのび過ごすという希望のようです。夫婦別室は、スペース的にも恵まれていないと、中々実現しないのですが、狭くても小さくてもいいから、一緒に並んで寝るのではない工夫をしたいと言うのです。だんな様のいびきとか、具体的な理由もあるのですが、生活時間差だけでなく、寝られない時間の過ごし方や、横に寝ている人への遠慮が、別室希望になっているのでしょう」と見ています。
高橋順子さんは、一人暮らしが長かったので、結婚当初から、自分の部屋で眠りたいと希望して、夫婦それぞれが個室を持っています。 「もっとも、散らかすのは自分の部屋だけにしてくれというご主人の希望もかなえての一石二鳥だった」と、笑っています。
貝塚さんもおっしゃるように、寝室の照明は難しく、個室なら、電気を点けて相手を起こしてしまう心配もありません。
□ ヨーロッパでは、一緒に寝るのは歴史的習慣ですが・・・・
日本のふとんは、一人用が原則です。押入れの幅も、ふとんの幅です。 大の字になって寝る開放感もあり、別々に寝るのが習慣だったので、不便だの窮屈だのと思うのでしょうか。
外国生活も長かった北村光世さんは、こんな話をしてくださいました。「ヨーロッパの人は、挨拶もハグ。日本人の距離をおいた挨拶とは違います。イタリア人の例ですが、ご主人が隣でガンガン咳をしていても、一緒に寝てる。自分の体の一部が風邪をひいているという感覚なのよ。いってみれば、考え方が全然違う。 ヨーロッパ人は、片方が眠れなくて、となりの人を蹴飛ばしたいなんて発想はないと思う。相手に対して優しいですね。
夫婦が一緒なのは当たり前、とりあえず今の状況の中で上手く生きていこうとするの。でも、アメリカは、ちょっと違う。ベッドを二つにするなら、キングサイズに変えますね。こっち側とあちら側では、明かりも迷惑にならない大きさだったりするからね」。
生活習慣と文化の差を実感したひとときでもありました。
5. スローフード生活は、快眠に通じる
快眠のために
①笑って話して、ゆったり食べたい。 日本の食卓はしつけの場。楽しくなかった。早飯は芸の内といわれる風土だから、食卓での会話は育たなかった。
②ハーブに注目! 夕食は、どうしても豪華。 一日でやっと寛ぐ食卓です。肉料理も出てきます。けれど、ハーブをお忘れなく。肉食文化にハーブはつきもの。家庭の洋食 に入り忘れた消化剤です
⓷昼間は、意識的に 体を動かし、働くこと なんでも合理化されて、 家の中でも動く量は減る一方です。手に力を入れて拭き掃除を復活させたら、思わぬ快感も。丁寧に暮せば快眠です。
➡楽しく食べる。 お酒はほどほどに飲む が極意だそう。特に、お酒の「ほどほど」は、肝臓の強さ次第。赤ワイン「小さめで1杯」が、寝酒のほどほどだとも聞きました。
ハーブ党のイタリア人は、不眠が少ない?
寝酒より、胃薬より、「ハーブ」! という話の流れになりました。お酒は、麻酔と同じといういい方があります。醒めると目が覚めてしまうので、寝酒を重ねると、どんどん沢山飲まないと眠れなくなるようです。実際、更年期の不眠で、「お酒で寝ようとして、いろいろ試しました」という人もいて「結局、お酒で不眠は直りませんでした。二日酔い気味で疲れただけ」だそうです。 胃薬より「ハーブ」というのには、訳があります。
ハーブの原点は、地中海沿岸。いまや、ヘルシーな料理とは切り離せないハーブですが、それというのも、素材を美味しくするだけでなく、薬草としての効能を発揮するからです。
中でも、消化力は、期待される効果の代表。笑いながら、話に花を咲かせながらの食事を、体の中からバックアップしているといえそうです。ベッドにたどり着く頃には、腹六分目の体になるのでしょうか。
睡眠前の夕食は、体も心もリラックスさせよう。
□ 楽しくゆっくり食べれば、消化にいい。
イタリアの食卓風景に触れてきた北村光世さんは、「食卓は、子供には躾の場でもあるけれど、楽しくゆっくり食べたい。イタリア人の食事に比べると格段に早いです。そういう点は、地中海の人に学ぶことは多いと思います。昔の歴史からみると、日本の食生活は基本的に貧しかったのだと思う。古代ローマ の人たちがワインで豪勢に食べていたとき、日本ではどうだったんだろう。土地からの恵みがつくっていた文化の差なんでしょうね。
それに、日本の食事では、食卓を囲むというのは、新しい考え。以前は、一人一人のお膳でしたもの。家族が語り合ってという雰囲気はなかったわけですし。ゆっくり笑いながら食べる食事が消化にもいいと知りつつ、テレビに向かって食べている食卓は、多いですよね」。
□ 消化を助けるハーブや香辛料を活用しよう。
「お酒は、醒める時が目覚める時で、快眠に結びつかないけれど、ハーブはいい。どうしてもお酒という方には、ホットワインに、ラベンダーなど鎮静作用のあるハーブを入れて飲むことをお勧めします」とは、高橋順子さんからのアドバイス。ハーブ研究家でもある北村光世さんも、「ハーブは、西洋料理が日本に入ってきた時に、一緒に入るべきところを、忘れられたものなんです。もともと、肉とか重い動物性のものを食べるようになった時、もっとハーブやスパイスを使って、体に負担がないように食べるべきだったんですね。
日本人は、嗜好的には、すでに西洋人の舌になっているので、西洋の文化に習って、ハーブを取り入れるべきだと思います。消化に関しては、そう思います」と、注意を促していらっしゃいます。ほとんどのハーブは、消化に関係しているのです。「タイムやミントもそうですよ。胃薬にミントの味がはいっているけれど、あれも消化を助けるため。例えば焼肉をするときに、肉をレタスでするように、ミントで包んで食べてご覧なさい。ずっと消化にいいはず」とのことでした。日本の魚料理にも、同じことが言えるそうです。「例えば、山椒、三つ葉、わさびも、淡白な魚を消化するために必要です」。
□ ナイトキャップは、ほどほどに。
寝酒は、効く人・効かない人いろいろですが、寝る前のお酒は、肝臓に負担というのはさけられないようです。 「もっとも、肝臓の強さは人それぞれなので、何ともいえない」のですが、赤ワインを小さなグラスに少々なら、冷え性の体を温めるという効果はあって、眠りに誘ってくれそうです。
けれど、「眠くなるほど飲んだ時は、結構飲んだ時だからね」と自覚する向きは、ご用心。お酒の代わりに、ハーブティはいかがでしょうか。カモミールや菩提樹がお勧めです。 ハーブティのティバックを枕元に置いて眠るという声もあります。お試しを。