2003年11月 発行所 「50カラット会議」
50カラット会議レポート
41号
旅は、もっとステキな自分になって帰ってくるチャンス
海外旅行の醍醐味は、なんといっても「女性であることの気持ちよさ」に浸れることだと言います。見知らぬ土地や文化に触れる楽しみは勿論ですが、引き回しの刑よろしくあちこち移動するよりは、ここ!と惚れこんだ宿で、ゆったりとサービスの行き届いた時間を過ごす悦楽に目覚めた50代です。
お買い物、その場に溶け込むおしゃれを楽しむ、エステやマッサージを受ける、海外なら夜のプログラムもいっぱいあります。一方、国内旅行は、最近は親や姉妹と連れ立って、思い切りおしゃべりをして、これまでの空白を埋めるコミュニケーションの場にもしています。
若い頃は、バックパック1つで、無鉄砲な旅を重ねたという人も、さすがに近頃は「固いベッドはお断り。気持のいいホテルに泊まる楽しみを追求しま す」と言っています。 今も昔も、旅は、もっとステキな自分になるチャンスのようです。
蛇の道はヘビに聞くシリーズ㊶
ケイタイとカメラは置いて、旅にでる・・
ほんとうはプロのトラベラーになりたかったという建築家の小林裕美子さん、43歳のとき最後のバックパック旅行をしたという店舗プロデューサーの安達みゆきさん、モデル時代に年不相応のゴージャスな旅行しましたという宇佐美恵子さん、最近は夫との旅行が増えた佐藤良子さん、世界各地の中華料理を食べるのもテーマという管理栄養士の森野眞由美さんに集まっていただきました。
「現実と日常生活をもっとイキイキさせるために旅はある」が、共通の想いです。
目次
1. 旅は、いつもの自分に拘らなくていい時間。
凹みそうになると、ふくらませに出かけています。
2.旅は道づれですが、ひとりがいい旅もあります。
グループづくりのポイントは、金銭感覚が同じなこと。
3.五感を働かせて、ゆっくり旅に溶け込みたい。
もう、強行軍や貧乏旅行はできない・・・
4.宿での夜、どう過ごしますか?
国内旅行の夜は、食べて飲んで、眠るだけ。
5. ひとり旅は、足と宿の確保が先決、あとは現地へ行ってから。目的型なら、ネット情報が最近の味方。
1. 旅は、いつもの自分に拘らなくていい時間。 凹みそうになると、ふくらませに出かけています
もっと気持いい自分になるのが旅だから、貪欲になります。
心は凹んでいても体は元気なとき、旅に出ます。イメージする自分になりたいから、本当にやりたいこと行きたい場所を絞ります。
●凹むのは、仕事への感性。 仕事への関心が旅をさせてくれた。異文化への旅は、発想に転換や着想を与えてくれた。旅は感性を磨いてくれる。
●凹むのは、日常への感激。
繰り返しが続く現実は、感激のない暮らしに陥りがち。楽しむ自分、楽しませる自分づくりには時間空間にもメリハリ効かせないと・・
●凹むのは、新しいものへの欲望。
百聞は一見にしかず。見知らぬ土地、気になる文化は、足腰頭が丈夫な内に訪ねたい。お金を使う価値と楽しみが、旅にはある。
「非日常」って、妥協のない時間でしょうか。
家の中では、家族の太陽だもの、ニコニコ機嫌よくいようと努めているし、仕事場でも、お互いに気持よく机に向かって欲しいと願って、無意識でも気配りの年代です。ですから、仕事、家事から離れて旅に出るというだけでも、解放感があります。
国内旅行ですと、どうしてもケイタイ持参。日常への引き戻しは頻繁ですが、それでも旅は、日常では叶わない時間と空間に浸れます。
あちこちウロウロはせずに、空白の時間に身を置く、エステやマッサージに身を任せるのもよしです。
海外旅行なら、夜のプログラムにもこと欠きません。レストランも劇場も、大人の時間を充たしてくれます。そこでは、日本にいては望むべくもない女性たちへのサービス精神も一杯で、すっかり気持よくしてくれます。「飛行機に乗った時から、自分モード」という切り替えの早さも身に付けました。
そして帰れば、上機嫌の人。旅は、自分にもまわりにも幸せをもたらす玉手箱です。
旅は、人生の一部です。
□ 旅は楽しい。旅したことが、仕事にもポツリポツリと役に立つんです。
若い時にプロの旅行者を目指したという小林裕美子さんは、「あの頃見た街や建築やホテルが、建築家になってから役立っています。40代の頃、ホテルの仕事が多かった時期がありましたけど、あちこち旅行したり、イタリアに住んでいたことなどが、思いがけなく役立ったのにはびっくりしました」と、おっしゃいます。
小林さんは、20代には何とか旅を続けられる職業はないものかと、真剣に願ったそうです。親は外国をフラフラする娘を案じたものの、仕事に必要だとか言い繕っては、イタリアを拠点に旅を重ねていたそうです。現在は、日本とイタリア半々の生活ですが、「フラストレーションが溜まると、楽しい設計が出来なくなる。自分が楽しくないとね」と、飛行機に飛び乗る習慣は続いています。
また、管理栄養士の森野眞由美さんも、「仕事柄、旅は食べることから切り離せませんね」とにっこり。 「近頃は、アジアはもう旅行じゃない。ちょっと帰ってくる、お昼を食べに行くというノリ。 世界中に散らばるチャイニーズを食べ歩くというのが、旅のテーマになりました。
それに、旅は、仕事を楽しくするための投資の一つ。おいしいものを食べて帰ると、五感がすべて満足します。五感で確かめる旅は、そのまま仕事の糧ですし、元気のもとです。しっかり働いて、そのお金で旅に出る。旅は勉強でもあり、遊びでもあるのね」。
□ 飛行機に乗ったとたん、スイッチオン!
「そう、自分自身モードになるのね」とうなづくのは、店舗プロデューサーの安達みゆきさんです。
「旅に出たいという気分の時って、体は元気なのだけれど、自分自身のモードで考えたり感じたりしにくくなった時ですね。でも、いつでも行けるわけじゃない。一つの仕事が終わって、次が始まるまでの間に、心の元気を取り戻す旅に出ていました。そんな時は、飛行機に乗ったとたん、自分モードに。心は軽くなり、誰かと話すのもポジティブになっちゃう。チケットと初めの宿泊先だけしか決まっていないのに、願うことは全部叶うという旅が出来ちゃうんです。友達も出来て、前から行きたいと願っていたレストランとかも、芋づる式に用意されていくという具合。鼻がきいて、カンも働いて、自分の世界がぐんぐん開けていく」と、旅の力を話してくださいました。
□ また帰ってくる場所と仕事があるから、旅は楽しいのね。
「昔は、チーズとワインがあればよくて、どこに住もうかななんて思っていたけれど、この頃やっぱり、日本に居場所があって、仕事があるから旅が楽しいのだと感じるようになりました」と、安達さんが口に出すと、一同「そうそう!」。旅の醍醐味は、帰ることにあるようです。
「移住してしまったら、それが日常になっちゃうわけだし・・」と森野さん。お金や時間だけでなく、自分を楽しむ自由を手にした50代は、擦り切れそうになったらステキな自分を取り戻す旅行術を身に付けているのです。
仕事のスケジュールを調整していると、「旅行が入っているから・・・」と言い出しにくいのですが、そこはそれ、仕事のネタ探し、活力づくりと固く決意して、初志貫徹。「帰ってきたときの自分」に憧れて計画した旅なのですものね!
2.グループづくりのポイントは、金銭感覚が同じなこと。
「非日常」の基本は、ひとりでしょ。
行きたい所、見たいもの、時間をかけたいことは、人それぞれ。調整の必要なしが理想です。
●ケチな人とはいや!
「ワインの選択でもめた時を思い出すと、がっくり」「食べに行こうかという時もったいないと言われてええ~っ!」金銭感覚は一緒の方が楽しい旅ができます。
●遊び心も、旅行体験もたっぷりの人と行きたい。
「TPOをわきまえて、自分を演出できる人と行くのは楽しい。夕食時や、行き先に合わせたおしゃれも上手だと、非日常は盛り上がります」。
●海外で日本人に会ったら、挨拶は交わしたい。 「挨拶しないのは非日常願望の裏返し?」「それだけ日常のストレスが強いってことかな」「挨拶が返ってきたと思ったら、中国人でした!」
国内旅行は、もっぱらコミュニケーションが目的。みんなで寛ぎに出かける温泉が中心です。
「以前は子供に新しい体験をさせる旅でした。この頃は、夫婦ふたりか、老いた親を連れての旅になりました」という年代です。
親たちは、まだ元気でも、ゆっくり温泉が一番の希望。季節のいい時に、連れ出します。
「最近は、ゆったりスケジュールのパック旅行もあるから、あれは便利。第一面倒をみてもらえる!」と嬉しそうなのは、宇佐美恵子さんです。
森野眞由美さんは、「母親とは、ずいぶんあちこち行きました。ネットで調べて、仕事のスケジュールをみながら、早めに決めて行きました。そういえば、ランプの宿にも行きましたよ。でもね、親たちはふだんテレビっ子。テレビがなか!と言われちゃった・・・」と、懐かしみました。
そうなんです。家族旅行は、「方たがえ」みたいなもの。
けれど、日本の宿は、夜のプログラムはないし、映画でも観るかと探せば、ビデオのラインナップはとんでもなかったりします。
「温泉に入って、食べて、飲んで、寝ちゃうのよ」。いつもより早寝早起きです。
旅から帰って、「やっぱり家が一番!」と言われたことありませんか?
道づれの達人になりたい!
□ステキなグループ旅行しました!
いつもは「旅はひとりで」が基本の安達みゆきさんですが、最近素敵なグループ旅行を 体験しました。
「3組6人のグループでした。みんなお互いに、この人とという風に参加した3組でしたし全員が海外慣れしていたということもあって、余計な気遣いが要りませんでした。 さあこれからは自由時間となると、それぞれがどこかへ飛んで行ってしまう。一緒にという時はパッと集まる。そういう風にメリハリが利いていて、場面場所や目的によって、ファッションもバッチリ。6人が6人共、同じレベルでバシッと決めてきました。皆さんそれぞれに
重ねてきた自分の旅の体験を感じさせるものがありました」。 それは、それぞれの見識もさることながら、コーディネートした方の力量だったのだろうと
一同感嘆しました。
□ 金銭感覚の違いで、残念な想いをした体験は、それぞれが持っています。
「シャンパン1つで、もめたこと思い出しました」という方がありました。 「せっかく、美味しいもの頼もうとしていると、そんな高い・・なんて言われて、ガックリしたことがあります」という方もありました。 旅行中の金銭感覚は、近いほうがよさそうです。 「面倒だと、おごってあげる!って言っちゃう。旅行には、時と場合での必須アイテムがあるのに、それを高いのなんので諦めるなんて、何のためにそこにいるのか分らないですよ」というわけです。
□ 海外での日本人同士って、微妙な関係・・・
つい最近まで画廊を経営していらした佐藤良子さんは、「一緒に旅行ではないけれど、海外のホテルのエレベーターで、日本人に出会って挨拶すると、知らん顔されることがあるでしょ。あれ、戸惑います」と、話題を投げかけました。一種異様な雰囲気を思い出す方もいらっしゃるでしょう。
「近親憎悪?」
「それはあると思う。けれど、同じ日本人と思われたくない方もいますよ。ご挨拶は控えたいと思うような・・。でも、お互いにキチンと挨拶を交わせる人かどうかは、瞬間的に分りますよね。なんとなく、この辺で、美味しいところあります?なんて、情報交換することもありますもの」
「あっ、日本人だと思って、ニコッと笑って挨拶して、ニコッが返ってくるのは中国人よ」 「日本人同士じゃなくても、外国人にも、顔が合ってニコッとする日本人は少ないですよ。 いろいろ話さないまでも、挨拶くらいはしたいですね」
「海外で、日本の旗を背負って仕事をしている人には、旅行者といっしょにしないで!という気持があるそうです。それだけストレスが大きいのでしょうね」 「海外に行く時って、映画の1シーンなのよ。日本人がいちゃ困るのよ。日常すぎて・・」ホテル情報には、日本人の利用率が提示されているのだとか。 やっと夢の世界に入ったのに、現実に戻されたくないのねとは言うものの、世界諸国の方々の場合はどうなのでしょうか。気になるところです。
3.五感を働かせて、ゆっくり旅に溶け込みたい。もう、強行軍や貧乏旅行はできない・・・
3~4日の旅ならアジアがいい。 ヨーロッパなら10日はないと疲れます。
街、建物、芸術、食べ物、自然etc.その国が文化として大切にしているもの、どれかに絞って、出かけて行きたい。
●あれもこれもと欲張る旅は、もうしません。
せっかく来たのだからと足を延ばすのは疲労のもと。スケジュールには空白の一日を作りたい。着いた日はエステ等でスッキリの贅沢もしたい。
●「サービスを受ける旅」に相応しい年になりました。
ホテルや旅館には、一流のサービスを期待します。TPO無関係にカジュアルというより、TPOを楽しみたい。上手にチップを渡せる年齢にもなりました。
●金銭にゆとりのある旅をします。 旅を楽しむために働いてきたようなもの。ご褒美だからケチりません。若い時の旅で多くの人に助けてもらった分、今お返しする旅をします。
旅先で、女性たちはどんどんキレイになる・・・
キレイになるのも、旅効果です。
その国、その土地のファッションを取り入れていく楽しみは格別。解放気分ついでに、日常では思いもかけない美しい色をまとって、街を歩き、
ホテルで寛ぎ、レストランや劇場に出向きます。 正に「女を磨く」という言葉にふさわしい、至福の時間をたっぷり作れるのも、旅ならではです。森野眞由美さんは、思いがけなく空白の日が出来ると、エステとマッサージだけを目指して、台湾や韓国へ飛んでいくそうです。
一同、「最近は、あちこちでエステが受けられるようになって、ほんとに嬉しい!」と頷きました。「それに、なんといっても、海外では、女の方は・・という丁寧な扱いに出会える。
それに応える緊張感も好き!見られるということが、自分をキレイにしていくのよね」。そうなんです。旅は凹んだ心を、気持ちよさという特効薬で膨らませてくれます。ケイタイどころかカメラも持たず、自分の五感を働かせて、自分が求めるものだけに熱心になる・・。そしてまた一歩、キレイになって日常へ帰ります。
海外旅行は、思い切り50カラットやってきます。
□ 海外旅行の楽しみは、ファッション!
「旅行用と定めて買う服があります。それに、旅先でも、いろいろ買います。 向うで買った服は、向うの景色や雰囲気に合うので、日本で普段着ているのとは、全然色使いも、スカート丈も違ったりします。雰囲気いっぱいの服を身につけただけで、土地にすっかり馴染んじゃったりして・・」と楽しそうなのは、森野眞由美さんです。 ファッションコーディネーターの宇佐美恵子さんも、「あちらで散々着ていたのに、日本に帰ったら着られないっていう服、ありますものね」と、旅を演出してくれたファッション力を振り返りました。
□ カメラは、要らない。
皆さん、「仕事のとき以外は、カメラ持ちません」とおっしゃいます。
料理だけは記録したいと考えている森野さんでさえ、「この間、ハワイに行った時、旅が始まったばかりなのに、デジカメが壊れたの。そうなると、真剣に食べるんですね。下手な絵なんかも描きましたけれど、写真を撮らないということで、印象がハッキリ残りました。
感動も違うのね。もっとも、仕事での旅行は、記録が必要だったりするから・・」とのこと。 建築家の小林裕美子さんも、「建物とか、時には門だけ撮ってまわったり・・」と、カメラは手放せませんが、ぶらり旅では五感専門だそうです。宇佐美さんも、「写真ばかり撮っている方っていますよね。記憶に残りにくかったり、肝心なものが見えないのではと心配します」と、カメラなしの旅を勧めます。
□ 「女性を意識する楽しみ」も格別です。
日本で仕事をしている時は、女性らしさはかなぐり捨てている小林裕美子さんも、外国では、「スーツケースも持ったことありません」とにっこり。
「外国の男の人って、女性として扱ってくれるでしょ。今日はキレイだとかも言ってくれるし荷物は持ってくれるし。自分が女になれる楽しみがあります」。 宇佐美さんも、「パリに行くと、毎日、今日もまたキレイになった!って思うのよ。女の人を大事にしてくれる文化は、女性を磨きますね」と共感です。日本の男性たちは、女性をキレイにし損なっているのでしょうか。 「レストランで、黙々と食べていたご夫婦が、ご主人の帰るぞ!の一言で出て行ったのを 目撃したときは、アレアレ?でしたよ。あれではねっ!」
□ 海外では、「年をとる楽しみ」も味わえます。
佐藤良子さんはおっしゃいます。 「日本とアメリカは、若ければ若いほどいいという傾向があるけれど、ヨーロッパは違う。70歳になったらシャネルのスーツを着ようという目標があるように、年を重ねて身につく文化を大切にしてますよね。階級社会が育てた分相応というものもあるし、それに触れると気持がいいですね」。 森野さんからは、「チップが自然に、タイミングよく渡せるようにならなくちゃ、高級なホテルに泊まってはいけませんよ。ペニンシュラなどに若い子がチャラチャラしていると、ちょっと勘違いしてない?と思いますよ。平等感にも分別がほしいわね」と苦言もありました。
4.宿での夜、どう過ごしますか? 国内旅行の夜は、食べて飲んで、眠るだけ。
例えリゾートでも、国内旅行は3~4日どまり。 飲んで寝るだけだから、それで十分。
日本には、仲間内で盛り上がった宴会文化しかなかったからね。
●温泉に入って、満腹になって、眠るだけ。 近頃は「貸切露天風呂」が流行。いくら好きでも、お風呂とご飯だけでは、間が持たない。ビデオでいいから音楽芸能や映画のライブラリー充実のサービスを。
●これでもかと並ぶ食事はどんな胃袋対象なの? 予約を入れた段階で、食事内容についての相談を持ちかけられたことがない。 庭園や自然と向かいあった食事スタイルも皆無なのが日本の特徴。
●国内旅行は、非日常より「いい景色+ご馳走攻め」 日常的に、名産も堪能して いるから、一泊二食付きも考えもの。その土地のレストランや割烹が選べれば、夜のおしゃれも街も楽しめて、プログラムは広がりそう。
何もしなくていい時間に、欲しいものがある。
国内旅行は、非日常の自分になりたいというよりは、非日常の時間です。
温泉に入って名所旧跡を訪ねた足の疲れをほぐし、その土地の美味を、上げ膳据え膳でいただく。満腹で眠る。御大尽の時間です。
それはそれ、そんな時間が嬉しい時もあります。けれど、日本の旅館の一泊二食付き生活は、けっこう高い。 若い時とは違い、それなりの施設とサービスを期待するので、これなら海外に行けたのにと、やや後悔すら覚えるお金を払っています。そう考えると、「間を持て余す」という状態は、旅先にサービス精神がないせいだ!と、憤ることになります。お座敷芸に興じる習慣もない私たちは、せめて閑な時にしたいあれこれを用意してもらいたいと願います。
できればライブで土地の芸能や音楽に触れたいけれど、ホテルのロビーや中庭で映写会もいいし、どの個室にもあるテレビで、映画の選び放題も嬉しいので
はないでしょうか。エステもいいけれど、メイクやネイル教室も歓迎です
国内旅行は、家族との思い出づくり・・・
□ 上げ膳据え膳
「この頃は、国内旅行といえば、ゆっくり休みに行くのが定番になりました。温泉好きなので、お風呂にゆったり入って、美味しいお酒を飲んで、ご飯食べて・・・。東京でのものすごく忙しい生活から、ご飯も作らない、片付けない、お布団の用意もしない、ひたすら休む生活にするのが嬉しい」といいます。それも、忙しさにかまけて話しこむ機会が少なかった親と出かけようかと計画します。
海外は自分中心という人も、国内旅行は不思議と「誰かとおしゃべりを楽しみながら」が目的になっています。
親たちの希望は、移動はせずに宿でのんびりが一番の様子。ご両親を車に乗せて旅行しますという宇佐美さんは、「私の母は、お友達とホテルで
ご飯いただいて、おしゃべりするだけでいいみたい・・」と、温泉とおしゃべりが堪能できる場へ一直線だそうです。
□ それにしても、旅館の食事は・・・
日本旅館の宿泊は、朝夕二食付きが大勢です。予約時に、宿が確かめるのは、食事する人数だけ。 こちらから、油ものは・・とか、○○は・・と言い出さない限り、黙って座ればズラリと並ぶのがお定まりです。
「皿数が少ないと不満という人が多いんだって・・」とのことでしたが、山間部でもお刺身という揃い方には、首をかしげる年齢になりました。
最近では、デパ地下マーケットのおかげで、各地の旬にもすぐ出会える生活です。地方の有名料亭やシェフの味は、日常の食べ歩きの対象で、ご馳走攻めが嬉しかった時は過ぎたというのが実感です。
材料が無駄になってはいけないけれど、予め宿のメニュー表から選択しておく方法がとれれば、どんなにかいいでしょうか。
また、最近は、テレビの旅番組や情報誌などで、土地の美味しいもの屋の紹介も多いので、宿では朝食だけにして、昼と夜は食事に出かけていくというスタイルも歓迎です。 外に出かけるのは、おしゃれをする楽しみも味わえます。会席のフルコースより、その土地一番のお豆腐とか、野菜とか、鍋物でゆっくり食べたいのに、これでもかと並ぶ食事を思うと、駅も街の様子も全国一律平均化した国内への旅に、イマイチはしゃげない50代です。
□ キレイな自然には、ワインとチーズが似合う。
「屋久島にも、ワインとチーズを持参しました。私は、どこに行ってもスポーツをするので、自然と一体感のあるところが好き。自然の中でのワインとチーズとソーセージって、美味しい。どこへ行くにも持って行きます」と宇佐美恵子さん。 安達みゆきさんも、「私も、ワインとチーズとオリーブとサラミが定番よ」。 小林裕美子さんにいたっては、「小さいクーラーを持っていきます」とのことでした。 旅先の解放感を盛り上げるワインですが、国内では、よほどでないと好みの味に出会えないというのが、共通認識になっているようです。
5. ひとり旅は、足と宿の確保が先決、あとは現地へ行ってから。目的型なら、ネット情報が最近の味方。
どこに行こうと決めたら、次は宿。施設も大事だけれど、旅の目的の数ほど有形無形のサービスが知りたい。
●食事は、押し付け御免。 メニューは、事前に相談してもらいたい。体調や年齢に合せて調整したい。宿泊料と食事代の区分も必要。食事の選択幅あれば土地の伝統食など、特別料
理も頼めて楽しい。
●ひとり旅の夕食には、ショウが欲しい。 夫婦でも話すことがないと 見ながら、聴きながらの食事がいい。自然を眺める、ライブを見聞きするダイニングルームがあれば、気楽で楽しい。
●宿まで行けば、コンシェルジュが待っている! 明日の予定、食事の予約地域のイベント、近隣の楽しみ方と道具まで。コンシェルジュは、地元の物知りボランティアでも可。「思い立ったが吉日サービス」?
パック旅行は、組み換え自由が魅力的。
旅慣れている人は、「飛行機と宿だけ押さえて、あとは現地の状況をつかんでから」動き方を考えるそうです。
けれど、そこまで自信がない人が大部分。数日から1週間くらいの旅行ですと、ゆったりとはいえ、無駄足を踏まないくらいの周到さは必要です。
それには、パック旅行は便利。立ち寄る先の施設やお店が閉まっているなんてこともないでしょうし、交通機関も確保済みなはず。
第一、パック旅行は、安い!個人で計画すると、とてもああはいきません。但し、パック旅行は、コース単位で出来上がっています。往復はこれで、行った先は別のコースでという組み合わせは難しいようです。
往復の足と宿のパックと、行き先でのツアーやイベントのプランが示されて、選択して組み合わせられれば、どんなにいいでしょうか。
若い時のように、せっかく来たのだからと寸暇を惜しんで動き回わるのを止めた年代としては、名所めぐりも、あちこちより1~2か所じっくりが望みです。
ついでながら、移動のシートは広めが望みです。飛行機に女性3人以上のビジネスシート割引があったら、気の合う友人との旅は、それでキマリ!なのですが・・・。
昔も今も、旅は人生への贈り物です。
□ とりいそぎ飛び立つ人vs.用意周到派
「たいていの場合、飛行機に乗るまで仕事に追われています。乗ったとたんに、ああこれで考えてもしょうがないんだと、頭を切り替えます」とおっしゃるのは、宇佐美さん。 パッキングも、前日の夜か当日の朝ということが多いそうです。チケットと最初の宿だけ押さえるのがやっとの時間のやりくりでは、当然の成り行きです。 けれど、森野さんは正反対。そもそも旅のスケジュールは、1シーズン前に決めています。仕事は、旅のスケジュールを避けるように引き受けていきます。 「次はあそこと決めたら、ネットで下調べをし、旅行社のパンフレットを眺めます。そこでも、旅気分を味わったりして・・。でも、今回は失敗。ホノルルウォーキングに行こうとしていたのに、どうしてもクライアントとの時間調整がつかなかったの」。
とはいうものの、ガイドブックを読み、体験者の話を聞き、ネットで紹介されている体験談を眺めて、あとは現地でカンを働かせればいいという位、下調べは徹底しました。
□ 「格安パック旅行」
パック旅行は安いというのは、誰もが知っています。 けれど、先行するイメージは、連れまわしの刑。 観光名所めぐりをして成り立つ値段とは思いつつ、足と宿だけに参加して、あとは自由が望みです。
それほど「パック旅行」の値段は安い。同じホテルに個人で申し込めば、まさか値段。 「でもね、ネットで調べると、いろいろな値段が出てくるのよ。よく調べた方がいい」と、森野さん。
「安さもあるけど、パック旅行のメリットは、面倒見がいいこと。親を連れての旅行だったら結構助かると思います。行った先で、あちこち回るのはキャンセルして、ホテルに下ろしてもらえればいいですけどね」と、ご両親との旅行を計画する宇佐美さんです。 パック=お仕着せというよりは、自由時間たっぷりのパック旅行に人気の秘密が分りました。
□ 昔、貧乏旅行を助けてくれた人たちにお礼の気持、忘れません。
安達みゆきさんは、天井からヤモリが落ちてきたような宿に泊まり歩いた若い頃、こんな 体験をしました。 「かわいそうにって、食事をご馳走してくれたり、お宅に泊めてくれたりした方もありましたよ。その中で、一番印象に残っているのは、バックパッカーなんか入れないすごいレストランに連れて行ってくれた人。しかも、先にお金を払って帰ったんです。
一緒にいたら気詰まりだろうから、好きなものを好きなだけ食べてもいいって感じでね。そういう経験があったので、今は自分にやってもらったことは、人に返さなくちゃと、そういう若い旅行者がいたら、ご馳走したりします」。
バックパック旅行は懐かしいものの、50代からの旅は、海外、国内に限らず、快適さが優先。昔の地を這うような貧乏旅行はしなくなりました。
けれど、旅はいつでも、昔と同じように心を騒がせます。今回の50カラット会議は、旅の数だけ自分に語りかける機会があったことの幸せを噛みしめあった3時間でありました。