2002年5月 発行所 「50カラット会議」
50カラット会議レポート
24号
ひとり暮らし
未婚の50代女性は、約46.6万人、夫に離別死別した方は、約128.2万人。そして、単独世帯で暮らす50代女性は、約70.4万人だそうです。
(2000年の「国勢調査」より)
50カラット会議にも、「子供が独立したらひとり暮らしになります」とか、「ひとり暮らしの日がやってくるだろうと思うけれど、不安が募ります」というお便りをいただきました。また、既にひとり暮らしを重ねている方からは「いままでは呑気に構えていたけれど、このままひとりで暮らす決意で人生の終わり方を考え始めました」という声が届きました。
そこで、part1は、ひとり暮らしのベテランとひとり暮らし歴2年の新米シングル計5名の方々から伺った「ひとり暮らしの続け方」をご報告します。
蛇の道はヘビに聞くシリーズ㉒
目次
1.「50歳」は、自分に向き合う年齢です。
2.ひとり暮らしの快適が用意されている時代です。
不安は、心身が弱ったときにSOSが出しにくいこと。
3.ひとり暮らしにおける、安全・安心の作り方
4.食生活は、体調第一。
不調な時に安らぐ「いつものあれ」は、常備しましょう。
5.ひとり暮らしを支えるネットワーク
1.「50歳」は、自分に向き合う年齢です。
50歳になったとき、「ひとり暮らし」にピタッとはまっている自分に出会いました。もう、人とは暮らせない。
〇ひとり暮らしの理由は、いろいろ。でも、選んだのだと思う。 「一人の時間の過ごし方が大事だし、上手です。」
〇40代では、グループホームも計画していた。 老後はケア施設がいい。「親しい人だからこそ一緒はダメが結論。わがままになったのね」
〇人生のたたみ方は、決めなきゃいけない。「お墓、臓器提供、献体、散骨」「不測のときの連絡先と方法の指示」「ぼける前にケア施設も選択」
ひとり暮らしして友達いっぱいをめざす
ひとり暮らしの解放感と生活習慣は、もう捨てられない人たちです。けれどその分、人とのつながりをどんな風に作っていこうかということは、真剣に考えています。いままでは、病気になると、情けないとは思いつつ「お母さ~ん」と電話していたのです。「友だちには、電話できなかった。みんな忙しいものね。忙しいのが分っているから、やっぱり親になってたんです」とか。けれど、その親も老齢になりました。忙しいだろうと遠慮ばかりもしていられないと、松原惇子さんが作ったのが、SSS(シングル・スマイル・シニア)ネットワークだそうです。それに、楽しみを分かち合う仲間も必要です。食べ切れないほどあるいただきものを一緒に食べたり、お花見に誘いあったりもしたいのです。
幸い、時間を気遣わずにすむメールにも慣れてきました。ひとり暮らしならではの、上手な人づきあいは、まずは自分を磨くこと。ときにはお客さまを招いて、傍目にも清々しい住まいも心がけると、ひとり暮らし名人たちの言葉でした。
ひとり暮らしの理由はいろいろです。
□ 「一緒に住もう計画」やーめた!
「好きな人がそばにいるのって、止めました」と言うのは、ノンフィクション作家の松原惇子さんです。松原さんは、気の合う者同士、助け合って住むという計画を、3年間の勉強会の末、中止しました。いろいろな人が一緒に暮らすと、いや応なく規律や規則を作ることになるし、それを守らなくちゃいけないし、守れなかったら、すまないと謝らなくちゃいけない。気持ちの負担が大きすぎるということが、最大の理由でした。
「確かに」と料理研究家の高城順子さんも続けました。「8年間、ケアマンションで過ごした父は、食事の時間も毎日キチンと決まっているのが好きだったからよかったものの、自分はとても耐えられない」。たとえ、それぞれが個室を持っていたとしても、24時間気ままを暮らしている現代人には、難しいという意見でした。グループホームというかたちは、何を助け合うのか、お互いの目的がはっきりしていないと難しいようです。
□ ひとり暮らしに合っている人、合わない人
「私、ひとり暮らしに合っているのね。ものを書いたり、クリエイティブな仕事していると自分の体のリズム次第の生活だし、人の気配があると気が散っちゃってだめなんです」と松原さんが言えば、装丁家の林さんは「新米シングルとしては、初めは淋しかったですよ。子どもたちとの10年がある日終わってのひとり暮らしでしたから。でも、いまは猫との暮らしがちょうどいい。それに、孫の具合が悪いと緊急召集かけられたりして、そんな小さな邪魔の入り方が、ほどよい生活です」と、ひとり暮らしの快適さを披露してくれました。自分の思惑と違ってひとり暮らしを余儀なくさせられたり、ひとりの時間の過ごし方が上手でない場合、「ひとり暮らし=孤独」という結末もありそうですが、60代になったら、それなりの仕事の仕方ができるように、仕事の幅を広げていますというような方々は、「孤独」とは縁がなさそうです。
□ ひとり暮らしが不可能になったとき
「ずっとひとり」を決めたとき、覚悟したこと、しておくべきことに目を向けています。死んだらという設定への決め事は、案外はっきりしています。
問題は、「老い」。それも、自分のことが判断出来なくなったり、自分の体や頭が思うように働かなくなったときへの準備です。
もちろん、松原惇子さんが始めた「助け合いのためのSSSネットワーク」でサポーターを作っておくという方法もありますが、あくまでもひとり暮らしを支えるもので、介護までは期待する訳にいきません。
「やっぱり、ケア施設でしょ。家族ならイライラすることも、それが仕事のプロが声を掛け、手をさしのべるのですもの。他人様がいいかな」。
「ケア施設を決めておけば、あとはもう気楽!」。ひとり暮らしの気楽、ここに極まれりです。
2.ひとり暮らしの快適が用意されている時代です。不安は、心身が弱ったときにSOSが出しにくいこと。
病気のときのSOS、落ち込んだ時 の気分転換術は、身につけておくこと。
病気の時のSOS術
日頃から、向こう3軒両隣とは挨拶を交わしておくこと。親しい友人には鍵を預ける、連絡一覧を貼っておく。
落ち込んだ時の気分転換術
家の中に、気持ちを回復させる居心地をつくる。物、スペース、交流網他。
親、姉妹、恋人でも、一緒より近くに住むのが一番。人との行き来が便利な場所で、安全な住居を選ぶ。日常生活は「ひとり用」を活用する。生活用品、食料から住宅まで、世はパーソナル時代。
ひとりの安らぎ、人の中での安らぎ
ひとり暮らしが楽しい、性に合っているという人は、「やれやれと帰る所が家」だからではという意見があります。ひとりになる、ひとりの時間があることで出来る仕事を持つ人にとっても、煩雑さから自分を隔離するひとり暮らしは、解放区というわけです。
とはいえ、ひとり暮らしが解放区という人たちも、何かの時には出かけていけば話し合う人がいたり、自分の役目があったり、集まる人への責任があったりする疑似家庭が必要だという発想があります。ひとりの場所で安らぐ喜びもいいけれど、人の中で安らぐのもなかなかです。そこを「クラブ」と呼ぶか「サロン」と呼ぶかはともかく、ひとりで暮らす人、中でも、ほんとうは一人になりたくなかったのに、なってしまった人や夫婦だけになった家庭の人たちが立ち寄れる場所があったらどうでしょうか。町の中に、週末だけオープンハウスになる家庭や公共施設が用意されるという着想もありました。
落ち込んだときの回復法
□ 落ち込み予防策もあります。
「声が掛かったら出かけていく、とりあえずスケジュールに入れておく」と言うのは、カラーコーディネーターの島袋晴海さんです。落ち込んでいても、人と話している内に気持ちが晴れてくるので、人と会える機会は、落ち込み予防でもあるわけです。もっと積極的なのは、松原惇子さん。「スポーツクラブに入っています。週1回発散しに出かけて、心身ともにスッキリする効果が一番かな」と、スポーツクラブでのバレエ教室に通っています。
練習のあと、サウナに入って、バレエ仲間とビールを飲むという土曜日は、その週の疲れとストレスを吹き飛ばしているそうです。落ち込んで気力がなくなってしまうと、ひとり家の中で穴の中にいる気分になるのが分っているから、人と出会えるチャンスを作っておくというベテランたちです。
□ その日の出来事で落ち込んだら。
「それは、美味しいもの食べて、思い切り喋るのが一番!」と、一同口を揃えます。喋る効果は、絶大です。「ガス抜きなのね。どこでガス抜きをするかなのだけれど、それは、やつぱり日頃からのガス抜き友だちの存在が貴重。その相手が回復の答を出してくれるわけではないけれど、喋っていれば、自分の中で解決策が浮かんでくる」と、料理家の高城順子さんが言えば、一同頷きます。女性の舌はネジ。喋っていくと気持ちのネジが巻かれていくのです。
それを加速させるのが、美味しいもの。美味しいものを食べると、落ち着きます。何か食べに出かけるだけで、気持ちは平均値に戻ります。
落ち込むと自然に、「あれ食べよう」と食べ物やお店が浮かぶと言うから驚きです。
□ そんな時、思い浮かぶ人がいるのは幸せです。
グチを聞いてくれる友だちを持っていると、助かることもあります。 「また言ってる」と思っていてもフンフンと聞いてくれる人、「こんな風にしてみたら」と、発想の転換を手伝ってくれるような人の存在は、なかなか貴重です。「私はプロのカウンセラーにかかってます」という方は、自分が気がつかなかった、乗りこえる力を持った自分を引き出してくれる効果があると言います。自分の可能性を信じられるようになったことで、ひとりで生きていく自分に自信を得たというのです。これもひとつの方法です。
□ 社交性は、ひとり暮らしを豊かにします。
自分のことで精一杯、体力も落ちたしと言いながら、隣近所との挨拶やおつきあいが気軽にできるのは、女性です。男性の単独世帯は、どうしても敬遠されがちなのに、その点女性は、にこやかな顔で挨拶を交わし、声をかけあうだけで、気持ちが明るくなれる特典を持っているのです。
3.ひとり暮らしにおける、安全・安心の作り方
安全は、住居と情報管理で。安心は、健康と財産管理で。
①健康管理の課題
□ 食生活管理 キチンと食べる、楽しんで食べるための知識と方法を得る事
□ 心身管理 キチンと動く、楽しんで暮らす人との交流を絶やさない
②財産管理の課題
□ 今後の働くスタイルを開拓し、収入を確保する。
□ 老後を保証してくれるお金の蓄え方と使い方を明確にしておく。
⓷住居管理の課題
□ ひとり暮らしを、ガードしてくれる管理体制のある住居を確保する。
□ 自分の体と頭が思うように動かなくなったら、ケア施設に入る選択をしておく。
④情報管理の課題
□ 行動的に暮らすための人のネットワークに参画する。
□ 何かの時に協力や代行を依頼できるネットワークに加入しておく。
□ パソコンによる情報収集が自由に出来るようにする。
ひとり暮らしのベテランは、安全と安心のシステムに注目する。新米シングルは、家族に代わるコミュニケーションのあり方に注目する。
ひとり暮らしのベテランたちは、個という単位での生活の成り立ち方について熟知しているので、個の生活が危うい状況を想定した「助け合い、かけつけ
合う」ネットワークに注目しています。一方、家族との長い生活を経た新米シングルたちは、離れていった家族達や血族とのコミュニケーションを生活の安らぎにしていることもあって、「個」の守り方よりも、ひとりで暮らす解放感に加えて、いかに周りの人たちとつながり合っていくかに関心が高いようです。両者に共通するのは、現在の日常を安らいで過ごすこと。自分がし続けたいことと共に、自分が人に対して出来ることは何かを考えながら
安全と安心のシステムづくりに参画していきたい皆さんです。
ひとり暮らしのサポーターは隣人たちです。
□ 食生活の心得
ひとり暮らしは無駄が多いというけれど、毎日必ず家で食事する習慣があれば、それなり回転するのです。けれど、そうもいかず、ある日まとめて「冷蔵庫の掃除」がやってくるようです。 一番困るのが、いただきもの。傷んだりしない内に、マンションの管理人さん、隣近所、はては新聞配達のお兄さんにも、おすそ分けします。「怪しい人なんて思われているかも」と言いつつ、止めるわけにはいきません。それに、この「おすそ分け」は、適度な距離感での顔つなぎになってくれます。「私は、人を呼ぶのが好きだから、パーティしちゃう。いただきものでお料理するから、あとは持ち寄りしてねと呼びかけてます」というのは林佳恵さんですが、いただきものがなくても、「人を呼ぶ」人は、多いようです。
「食生活が低調になったかなと思うと、誰かを呼んで食事をします。人を呼ぶと元気が出てくるし、キッチンばかりか、あちこちが輝きますから、一石二鳥」というのは、店舗プロデューサーをしている安達みゆきさんです。
□ 倒れた!誰かに助けを求めなくちゃの体験もあります。 島袋さんは、ドアの所まで這っていって、外で遊んでいた子供に「お母さんを連れて来て」と声をかけたそうです。挨拶を交わすだけでほとんどつき合いのない近所の人たちが集まって、助けてくれたのだそうです。
マンションの管理人さんが常駐しているなら、そこに通報すればいいのですが、そんな住宅ばかりではないので、緊急の場合を想定したSOSの出し方を決めておくのも必要という体験談でした。
□ 体管理は、早期回復がポイント。
子供の頃から学校を休みがちだったから、自分の体の声を聞く上手という高城順子さんは、「調子が悪いなと思うと、土日に約束があっても断って、ほとんど何もしないで、とりあえず体力回復するの。休んでいる間は、誰が何をしてくれるわけじゃないし、自分で対策たてます。こういう状況だから、これを食べてあれを摂って、お粥を食べて、しっかり良質の蛋白質で胃に負担のかからない調理しようなんてね」と、早い内に休んで、早く手を打つ様子を話してくれました。
□ 整理整頓・清潔のコツは、家具を掃除しやすく置くことです。
掃除好きはともかく、自宅を仕事場にしている人、よく人を呼ぶ習慣のある人は、部屋をキレイにしておくための工夫をしています。その一つが、レイアウト。家具を動かして、後ろや壁ぎわを掃除するのは面倒。そこでどこからでもホコリがとれて拭けるレイアウトを考えてあるそうです。億劫になり易いからこそ、掃除オペレーションはひとり暮らしの知恵だと、安達みゆきさんのお勧めです。
4.食生活は、体調第一。不調な時に安らぐ「いつものあれ」は、常備しましょう。
キチンと体の声に応える食生活ができる 商品と選択購入のための情報に期待がある
〇キッチンは、少量適性が第一です。電子レンジは、一人分量調理器具。小鍋、レンジ対応できる小さなボウルやふた付き容器で気軽さづくりへ。
〇体のバランスづくりにつながる食品群に強くなること。エネルギー源のご飯、お粥。トータルバランスのいいスープ煮込み、鍋。ビタミン、ミネラル源は野菜ジュースがお助け常備品。
〇その場しのぎにならない買い物を心がけたい。ストックがきく食品は、売り場やカタログ、ネット販売などで情報収集する。一人分量商品が増えて、ひとり暮らしはし易くなった活用したい。
誰かと食べるのが美味しいけれど。
子育てのあとでひとり暮らしを選んだ人は、誰かに食べさせるために料理する楽しみとは違う、自分だけの食事のあり方を模索中です。
「食べる」ことを健康管理の中心におく大切さは身にしみています。初めの内は、ひとり分作ることに、どれだけ熱心になれるかを考えたそうですが、
2年余のひとり暮らしで、いかに億劫にならないかに力を注ぐことが先決だと悟りました。
キッチンの整え方、食品の選び方、料理の楽しみ方にも、ひとり暮らし仕様があることも分りました。ひとり分の食事は、体のためが基本です。
キチンと食べる、食べることが億劫にならないように知恵を働かす方法を、料理研究家の高城順子さんから伺いました。
ひとりの食事を上手にこなせる人は、超一級の健康法を手にしているのだといえるのではないでしょうか。
ひとり暮らしの味方
□ 電子レンジ+小鍋
電子レンジは、優れものです。「茹でたりの下ごしらえはもちろん、ご飯も炊けるし、カレーも、茶わん蒸しもできますもの」という料理研究家の高城順子さんの言葉に、一同「えっ!?」。「電子レンジは、一足飛びに調理しちゃうのよ。炒める、蒸すもできますよ」とのこと。第一、電子レンジは、少量の方が短時間にできるのです。確かに、電子レンジで作る茶わん蒸しは、すが立ちますが、「別に誰に見せるわけでなし、蒸し器の面倒さを考えると、茶わん蒸しを食べられる方を選びたいと思うのです。それから、ご飯。これは絶対のお勧め。1カップのお米なら、お赤飯だってグリーンピースご飯だってバッチリ」の言葉に、そうなのか!と感動しました。鍋の揃え方も、作って食べる気楽さづくりのポイントです。小鍋は、径が15cm~18cmがほどほど。2個は揃えてください。それに、パスタを茹でたりする深さもある大きめの鍋1個を用意すれば、日常的には十分です。
□「1回作れば、3日おいしい」ひとり暮らしメニュー
「忙しいときにお勧めの3変化メニューです。まず、じゃが芋とにんじんと玉ねぎを煮る。それをベーコンスープにして食べるのが1日め。次の日は、それにトマトジュースを加えて、3日目はカレーにします」「エンドレス豚汁。豚汁は、ある程度の量で作らないと美味しさがでないから、まず
3回分量作ります。 2回目は、きのこをたっぷり加えたりして、目先を変えます。そして3回目は、卵を加えて雑炊に」。お弁当を買う気になれない高城順子さんの、ホームメニューです。
□ 常備して便利な食品はこれ。
ひとり暮らしならずとも、最近は、家庭内個食の時代です。 冷凍庫は、いつも満杯という方は多いようです。ご飯もお粥も一度に炊いて、1回分ずつラップして冷凍してあります。3日分作ったのに、家で食事する機会がないからと冷凍したスープや茹で野菜も入っているし、点心類、うどんも常駐。
中でも、ご飯は、「レトルトのカレーで済ます食事には欠かせない」ですし、体調が悪いときの「温かくて胃にやさしい食べ方ができる」うどんは、重宝しています。「食べていれば死なないと思うから、体が弱ったときの食べ物のストックは、ひとり暮らしする人の鉄則です」とは、高城さんのアドバイスです。
□ ひとり暮らしでは食べにくいものもある。
代表格は、お漬物。けれど、それも最近の1人用パックブームのおかげで、クリアできる傾向です。それに、「ぬか漬けそっくりが、ヨーグルトを使ってできるとTVの“あるある大事典で紹介されていた」という話にも、一同「そんな時代なのね」と感心しきりでした。
5.ひとり暮らしを支えるネットワーク
松原惇子さんのSSSネットワークは、既婚未婚を問わず、「個」の生活をサポート する目的でつくられている。SSSは、シングル・スマイル・シニアのS。
〇代行ネットワーク
お金で済ませようと思えば「便利屋」はうれしい存在。お買い物は通販やネットに注目している。
〇協力ネットワーク
マンションの管理人、隣近所地域の人との顔つなぎは必要。ロックするより挨拶の声をかけることが安全弁。
〇お楽しみネットワーク
同輩先輩との交流は、安らぎのネットワーク。刺激づくりは後輩との交流が一番。人と楽しみたければ、素敵な自分でいることを心がけたい。
ひとりでは生きていけない。
元気な内は、どこで何をして暮らそうといいのです。けれど、50代になると、病気になったり、誰かの力を借りたい生活シーンが簡単に想定できて、安全と安心のネットワークを考え始めます。お助けネットワーク、かけつけネットワーク、楽しみや喜びの分かち合いが出来るネットワークが必要になってきます。 ひとりで住みたい、たとえ恋人でも一緒に暮らすのはゴメンという人たちですが、もしもの時にお手伝いしてくれる人や、精神的な支えになってくれる人とはいつでもつながるホットライン的ネットワークが必要です。ネットワークは、これまでの仕事生活や社会活動の中ででき上がった仲間でのものもあるでしょうが、いっそお金を払う契約スタイルの方が機能的に働くし、 利用しやすいということにも気づきました。
ネットワークの楽しみ・ネットワークからの安らぎ
□ 松原惇子さんのSSSネットワーク
「ひとり暮らしをバックアップする組織なんです。相談があればのるし、必要な情報があればあげるっていう窓口的組織です。現在、50代だけで、約500人の人が登録してくれています。まだ若いけれど、将来が心配で、どこか組織に属していたいという安全保障的会員が多いの。 だから、まだ実際には、相談の電話もかかってこない。活動は、もっぱら会員どうしの交流パーティ。楽しいことばかりです。
けれど、それが大切 。元気なときに、お互いを知っていることが重要でしょ。将来の楽しみといまの楽しみ方がダブルであるのだもの、いいと思うわ。50代って、まだ人を世話している年代ですから、いまシステムづくりをやっていて、世話される歳になったら、よろしくって頼ってしまおうと思うの、結局、自分のためにやっているってことかな」。
□ 若い人たちとの交流ネットワーク
「昔の人は、後輩の面倒をみるという習慣があったのですね。私たちって、自分ばっかりに夢中だけれど、先輩たちからいろいろしてもらったのだもの、順繰りに次の世代に返していかなくちゃと思います」というのは、装丁家の林佳恵さんです。林さんは、40代で早稲田大学にもぐりこんで勉強した経験から、若い人たちの感性やエネルギーをとりこむネットワークの必要を感じています。「それには、自分を磨かなくちゃね。素敵でいないと、人は寄ってこないからね」と、 松原さんも同調しました。安達さんは、ひょんなことから、若い家族との交流を楽しむようになりました。「いまはもう若い人の時代に入っているし、その社会で暮らすのだから、彼らとのベクトルもしっかり合わせておかなくちゃね」と、チャンスを育てるつもりです。
また、カラーコーディネーターをしている島袋晴海さんは、「学生を教えているけれど、いまに一人前になって、一緒に仕事ができるのが楽しみ」といいます。
□ どこかに「家族」のようなつながりを持つ楽しみもある。
「ひとりで暮らすのが基本なのだけれど、それが家族でなくても、家族のような協力関係で楽しめる時間があると心が豊かにいられるのでは」と言うのは、安達さん。なにもかも順調な毎日なのに、何かが足りないと感じていた時に始めたのが、92歳の伯母さまの庭づくり。ご自分で手入れが出来なくなった伯母さまに代わって、従兄弟たちに声を掛けて始めたのは、日曜日午後に集合しての庭づくりだそうです。庭づくりの面白さもあるけれど、なにより、同じ作業をするファミリーの気持ちが味わえることが嬉しいと言います。ひとり暮らしの解放区である自分の家を出て、同じ気持ちで集まる人たちのいる場所
へ出かける心地よさ。ここがあって、あそこがあるといったバランスのよさが味わえる場所づくりは、ひとり暮らしが増える現代の、新しい課題のように思えます。
「若い時は自分のために生きる。歳をとったら、誰かのために生きる」。そんな時間を持つのも、暮らしのバランスにつながる50代です。