2005年8月 発行所 「50カラット会議」
50カラット会議レポート
53号
「贈ったりいただいたり」が築いている絆があります
人にモノをさしあげるの大好きです。
普段ならおすそ分け、手土産、ありがとうの一言に添える小さな包み・・。お中元お歳暮、クリスマスも、誰彼の喜ぶ顔を思い描いては、気持ちを届けるチャンスにしています。50代60代は、親世代・子世代両方から頼りにされています。
心細くなった親からは、「いいもの取り寄せたのよ。取りにいらっしゃい」と声がかかりますし、親に寄りかかるのは当たり前といわんばかりの子供たちには、訪ねて来た時に持たせてあげようと、何かと取り揃えるのが習慣になりました。
地域限定、季節限定はもちろん、あの老舗・この新商品の話題の食品は贈ったりいただいたりの人気ものです。気心が知れている間柄とはいえ、こんなにモノが行き交うようになったのはやっぱり50代になってから。それまでは、気持ちはあっても忙しくてそれっきりでしたから、近頃すこし立ち止まる余裕ができたのかも知れません。
感謝、思いやり、喜びが、モノで伝える楽しみは、クセになるのです。
蛇の道はヘビに聞くシリーズ53
ふれあう幸せこめて贈ります
お中元お歳暮も、幸せのおすそ分け感覚になりました」と、この頃の人とのつながりを振り返ったのは、5人の方々。エッセイスト・檀晴子さん、装丁家・林佳恵さん、ノンフィクション作家・松原惇子さん、編集プロダクション主宰・矢崎潤子さん、編集ライター・山本加津子さんです。 50代は、人間関係も転機。これまでは勝手気ままにわが道をまっしぐらだったのに、親きょうだいと顔を合わせる機会が増えています。友人も仕事関係から気の合う仲間にスライドして、新しい絆を実感するようになりました。贈り物は、人とのふれあいが嬉しくて盛んです。
目次
1.私たち、面倒見がいい長女気質。世話焼きなのね。贈り物で、絆づくりしています。
2. 贈り物の極意は、自分も相手も幸せになること。
3. 消費に緊急を要するものは、手土産向き。贈り物は、相手のリズムに合わせられる自在さが肝要。
4.「ありがとう」上手になりたい。人って、持ちつ持たれつなのだから。
1.私たちって、世話焼きなのね。面倒見がいい長女気質で、絆づくりしています。
心通う友人とは新家族感覚 お互いを理解しあう、支えあうのは家族同士とは限らない。楽しく不安なく生きるために心の通う友人関係をはぐくみたい
●老親、妹たち、子どもの家族に何くれとなく目をかけます それぞれに忙しかった時は過ぎて、家族を振り返る余裕ができました。親を訪ね、姉妹で話し込み、子どもの家庭に体にいいものをおすそ分けする面倒見のよさです
●親には頼らない!と自立を目指した50代なのに、子どもはすぐに頼ってきます 自分が仕事と家庭両立に頑張ったことを振り返って、子どもを応援してやりたいと思う。頼られたい50代?
●親戚づきあいは希薄だが、友人同士で支えあう時代だと実感しています 遠い親戚より近くの友人。気楽に小さなおすそ分けがしあえるつながりこそ、日常の安心生活を支えていると思う。
おすそ分けが似合う関係は楽しい!
元気な親がいる人は、「美味しいものがあるから、取り寄せたものがあるからとロ実を作っては娘たちを呼び寄せるのよ。親たちの知り合いネットワークは、健康気分満載の食べ物が行き交ってますからね。いろいろあるの。私たち娘は、訪ねるといろいろ貰ってきます」。
そうかと思うと、「私が子供を呼び寄せて、あれこれ持たせで帰している」という人もいて、みなさん面倒見のいい50代を実践中です。
いただきものが多い家では、犬の散歩で知り合った近所の方にも貰っていただくことさえあるのだとか。野菜など、鮮度が勝負のモノだと、遠くの友人の都合を待ってもいられず、顔見知りの方の胃袋を拝借することになるそうです。
「たくさんあるからおすそ分け」という差し上げ方は、返礼なしが原則だから気楽だし、それでいてお互いの距離が少し縮まる親しみをつくりだして、好都合でもあります。これもこの歳にして身に付いた何気ない社交術。自然なもたれあいを上手にこなしてこそ、人間一人前です。
一緒に生きていくんだなと、周りの人たちを意識するようになりました
□「疑似家族」ともいえる友人たちがいます。
「実際の父や母とは縁が薄かったけれど、別れた夫の母と仲良くしていたり、仕事を通じて信頼や安心感でつながる友人ができたり・・。変わった生き方をしてきましたがいつでも思い出しては嬉しくなる家族のような人たちが、どんどん増えています」と林佳恵さんが口火を切ると、一同、50代を迎えて見えてきた新しい人間関係を語り始めました。
「私は、一人でも安心よというネットワークSSSをつくつているけれど、このネットワークは緩やかな家族をつくっているのだと思う。一人暮らしに不安を抱きはじめた人たちが、お葬式やお墓の心配をしないで済むという安心でつながっている。一人暮らしの人たち500人の長女をやってるって感じよ」と、作家の松原惇子さんは新しい支え合い家族の大黒柱になっていると、ご自分の立場を紹介しました。
□若いときは、家族という体制に背を向けたものだけれど・・
団塊の世代である山本加津子さんは、「私たちの世代は、親の世話にはならないと突っ張って若い時代を生きてきたつもりなのに、子供たちは親から援助してもらうの は当然という風だし、老いた親や姉との行き来も増えて、家族の真ん中で世話役やってる自分自身に気づいてハッ。主人の親を引き取ったこともあって、主人の兄弟との連絡も頻繁になったりして、家族という塊りを実感中です。それに、孫まで!孫に惹かれて娘の所に行ったり来たりですからね」と苦笑しています。
まだまだ体力もあり、それが気配りになって、「みんなに頼られる長女」生活です。「親は、いろいろ理由をつけて私を呼び寄せるの。通販で美味しいものを取り寄せたから取りに来てとかね。姉とはほとんど行き来もなかったのに、親のところで顔を合わせると、そのまま姉の家に立ち寄って夜中までオシャベリしたりするんです。一緒に 旅行にも行くようになってるわ!ほんとに、50代になってから、家族がまわりにいっぱいいるようになった。家族を否定していたあの頃の自分はどこ?って感じ。生活の転換ですね」。
□仕切り役がまわってきた!
親と自分の立場が逆転、親の暮らしを仕切る立場になりました。
「父が亡くなったとき、今は私がこの家の大黒柱なんだと実感したわ」というのは松原さんです。
「そんなとき母はダメ。お葬式の段取りも、父の貯金や後始末としての税金のことも全部私がやりました。私だって、誰かに可愛がられて花よ蝶よと言われて座っているだけで OKという風にしていたいのに、どうしてこうなったのと思ったわよ。でも、母も弟も仕切る社会性がなくて、私の友だちネットワークが助けてくれた」。いざという時に「お願い!」のひと言で集合させる力量は、「ゴッド姐さん」ですね。
2.贈り物の極意は、自分も相手も幸せになること。
やっぱり食べ物が一番
「もうモノは要らない、食べたり飲んだりで消えてしまうものがいい」というのは、共通しています。食べ物は、健康価値も 分りやすくて、心遣いが伝わりやすいのも何よりです。
●喜ぶ顔が見たい!思いついた時が贈り時 思いやる気持ちを伝えたい。美味しいのよ、体にいいのよ、自分ではなかなか買わないでしょ、珍しいものおすそ分けです。
●親しさと気遣い伝えるのは何気ない手みやげ 何かの時に誰かに渡せるようにいくつも買っておくものがある。訪ねる先にはこの頃凝ってるこだわりの食べ物一品提げていく。
●お中元とお歳暮は義理というよりチャンスです
形式ばって贈るより、親しみこめてご挨拶したい人が贈り先になりました。季節感と自然の味覚で健康を願うメッセージ送信!
美味しさを手土産・感動をおすそ分け
手みやげの代表がお菓子なのは、そこに集まる人たちを幸せ気分にしてあげようという思いやりの贈り物だからでしょうか。
甘いもののあるテーブルには天使が降りてくるというそうですもの。一方、おすそ分けは、自分の感動を分かち合いたい気持からの贈り物。
たくさん収穫があった新鮮な野菜、食べきれないほど釣れた魚貝、取り寄せ便で出会った思いがけない健康素材や加工品への感動を、誰かにも味わってもらおうと、いそいそ電話をかけたり、送ったりします。
おすそ分けする気持ちには、食べ物への感動だけではなく、こんなもの見つけた!という感動も含まれていて、お分けするときは自信満々。
取り寄せ便などで見つけた「これぞ求めていたものなのよね!」という食べ物となると、その自信満々の声が伝播して、いただいた人が更に誰かにおすそ分けという連鎖反応を生み出すのだとか。おすそ分けの特徴は、日常の喜びに通じるものであること。つまり心身の健康感を満たしてくれる感動なのです。
贈る心
□みなさん、胃袋貸してください!
「生活クラプ生協や大地の会だのに頼んでいるのに、あちこちの取り寄せ便も頼むし色々いただくことも多いから、モッタイナイ運動のニュースを聞くと罪悪感を持つくらい食べ物が集まってくるんです。だから、近所の方にまでお願いして、おすそ分けさせていただいてます」と、檀晴千さんは思案顔です。
「贅沢かも知れないけれど、すごい量のお魚が届いたりすると、一日そのお魚と格闘して、差し上げる相手が食べ易いようにしなければならない。幸せだけれど重労働ですね。配る先はご近所。犬の散歩で知り合った犬友だちに、胃袋貸してと食べていただいてます。息子達は遠くに住んでいるから、家に来たときには、車にドサッと載せて持ち帰ってもらいます。送るなんてしませんね。共働きの家庭に生鮮ものが届いても迷惑なだけでしょうしね」。
□自分の楽しみのために贈っています。
「プレゼントって、半分は自分の楽しみですね。あとの半分が相手の喜ぶ顔がみたいという気持ち。何か贈る時って、相手の声が聞きたいなという気分だったりする。モノが大事というより、心の交流のきっかけになるということですから」
「愛なんだ!別に愛しているわと言うわけじゃなくても、愛を投げ合うのよ」「心をスマートに相手に伝える方法ですよね」
「モノをあげるというのは、自分のストレス発散するようなどころがある。あげるということは楽しいもの!」
□親たちは、私たち以上にモノをあげるのが好きです。
「取り寄せ便とか好きですよね。それも、これだって思うと、あの人の分、娘の分と喜ふ顔が浮かんだ数だけ頼んじゃう。母たちの基準は味。美味しいものです。届くと有無を言わさず、取りに来なさいですものね」と笑うのは、山本加津子さん。
「母の家に行くと、食卓は各地の名産、老舗のグルメ品がいっぱい載ってますよ。母のお友だちからのいただき物なのよ。珍しいもの、美味しくできたお手製のお惣菜・・母一人では食べきれないほどあって、持ってく?なんてね。
母の友だちはほとんどがご近所の方で、年齢も様々。出歩いてる内に出来た暮らしの仲間なのね。母も料理が好きだから、集まってはお食事してるらしい。食べることへの興味でつながった友だちだから、ずっと友達なんだと思います」そう言いながら、松原さんの目がフフフッと笑いました。
「だから、私が母にあげるのはパスネット。だって、食べ物は何でもあるんだもん!出歩くのが大好きだからパスネットにしました」。
なるほど、お母様はそれでまたお友だちをつくるのですね。お友だちの数だけ、お付き合いの楽しみと贈りあう幸せがうまれること、実感しました。
3.消費に緊急を要するものは、手土産向き。贈り物は、相手のリズムに合わせられる自在さが肝要。
●野菜をいろいろたっぷり美味
日常生活を豊かにするものを贈りたい
自然素材100%、無添加、昔ながらの製法の加工品を探し出すと贈ってあげたい人の顔が浮かびます。
●お米、お酒、調味料各種、そうめん、乾物、ジュース、ジャム、ゼリー 日常に使い切っていくものがいい。加工品は旬の味覚を暮らしに合わせて楽しめる便利品です
●生鮮品は受け取る側のタイミングも難しい。手土産なら大歓迎
自然の産物だからタイミングは自然任せ。そこがいいところなのだけれど・・
●「健康食品」は自分用に選ぶもの。贈り物にすると押しつけがましい 親がたくさん買って「体にいいから」とくれたサプリメントには当惑。効き目より味が贈り物の範囲です
いいものに出合うと浮かぶ顔があります
元気でいて欲しい人、会えば必ず笑顔の人、なにかと気遣いを交わしあう人、いいものに出合うと「おすそ分け」したくなる顔が浮かびます。
高齢になった親たちには、生ものよりは加工品の便利さ第一に、昔親しんだ素材や味が詰まったものを見つけたらお届けする。
金額も張らないし、量も少し。それでも、親世代はお付き合い上手。「いつも、ありがとう」と喜んで、届けた人の心を温かくしてくれます。 同輩同士だと、おすそ分けの方法は、もう少しアクティブです。「旅先で野菜買っちゃった!お魚いっばい届いちゃった!」としても、食いしん坊の何人かに緊急連絡して、今晩一緒にごはんを実行。その他にも、自分で試して、これだ!と感動すると、直ちに誰彼の分まで調達してお届け。私たちのまわりでも、まろやかなお酢、小魚や昆布など数品が入った手づくり佃煮セット、香り高いオリープオイルなどなど、マイブーム品情報 が行き交っています。おすそ分けされて気に入れば、次からは自分で調達しますが、その人も「あの人に教えてあげよう!」というわけで、これがロコミってことなのかと、その伝播力にびっくりです。
贈るなら花か食べ物です
□体によさそうなものを選びます。
「例えばどこそこのトマトが果物のように美味しいと聞くと、予算内て一番高級なトマトを贈るという風になりました。とはいっても、5000円のお豆腐に出合ったときは、さすがにお豆腐に5000円はないだろうって止めましたけど・・」というのは矢崎閥子さんです。
鮮度が勝負の生鮮物は、相手がそのつもりて待っていてくれればいいけれど、やっぱり手みやげとして提げていける時に限ります。
鮮度や旬に拘りたい時に便利なのは加工品。「特別なトマトでつくったジュース、スープ、調味料、ゼリー、スプレッド・・ いいと思う」とアイデアまで飛び出しました
□生鮮品でのアタフタが体験
「山菜が段ボールに入って、2箱3箱と届しヽた時はお手上けでした」
「帆立がいっはい贈られてきたときは、ドキッ。どうやって開けるのよ!ど呆然でした」
「イセエビもそう。死んでいるのかと思って触ったらピビッ!何て如てればいいやら・・」「触るのが怖くて、とうとう腐らせたものがあります」
「イチゴが4ケース入り5箱届いて、慌てましたね」
「自転車の後ろに載せて、おすそ分けに回ったことがあります。作った方か丹精込めてつくったものを下さったのだから、キチンと誰かの胃袋まで届けなくちゃ申し訳ないしと貰っていただきやすいように小分けにして包んで自転車にのせて・・J
□「取り寄せ便」体験は豊富です。
お茶、お菓+、調味料、お米、水、野菜ジュース、ワイン、野菜、ハム・ソーセージなとの肉加工品、漬物、果物、花etc
中でも調味料は、すぐ話題に上ります。そのまま食べるものではないので、材料や製法への関心で「特別」となると試したくなる筆頭です。
「生ものは、自分で試すにはいいけれと、誰かに贈るのは冒険です。自然次第たから、その時々によって出来も違うし・・当たる・当たらないがあるものは贈れません」という訳 で、贈り物には加工されたものの安定性が選ばれています
まずは自分で使って感動すると、誰彼構わず吹聴しますし、お中元お歳作にもご登場願うというのが定石です。「取り寄せ便」の身上は、感動なのです。
山本加津子さんは「京都の山椒じゃこ。東京で出会う同じようなものではダメ。それに、具だくさんのディアスープ。メニューも豊富だし、お年寄り家庭に喜んでもらいました。若いときは、自分の家で嬉しかったハムソーセージを送るのが主流だったけれど、最近は変わりましたね。やっぱり自分が歳をとった分、まわりも歳をとったのね」
体と気持ちにしっくりくる上質な食べ物との出会いは、誰かに知らせたい気持ちをかきたてるということでしょうか。
4.「ありがとう」上手になりたい。人って、持ちつ持たれつなのだから。
ありがとうのチャンスは人をつなぎます
モノが心の交流・人との絆に一役買っているのは確かなこと。だからこそ、受け取った人からの「ありがとう」は大事。無反応はルール違反です。
●おすそ分け、手土産はお返しなし その場できちんと喜びを示せるから、受け取る側も気楽です。容器も洗ってそのまま返しあえば十分。お互い様ルールです
●お中元お歳暮はあの時どうものチャンスです 忙しさに紛れてありがとうの機会を失くした相手には便利なチャンス。葉書1枚添えれば一件落着。
●あげ上手になりたい 美味しかったから、みつけて嬉しかったから、たくさんあるから・・とニコニコ手渡されると、気軽にありがとうと言っています。「気持ちばかりですが・・」というあげ上手なのね。
親子間に始まった届け物は、健康の詰め合わせ
離れて住む老親、子供たちとその家族には、「いつも健康で笑っていて欲しい」と気づかう50代。
時間に追われていた時期を経て、まわりの家族に気配りする余裕が生れたのでしょうか。「母親という感じより、長女、惣領の役目を果たしている気分」で、気配り・目配りを始めています。
経済的にも「自然天然に拘る食べ物」までは手が回らないはずと、子供家庭に取り寄せ便を送り届けるのも、それぞれの家庭に口は挟まないけれど、ここに愛ありを示す機会にもなると考えるからです。
便りのないのは元気な証拠とはいうけれど、月に一度、あるいは季節ごとのそうした届け物は、「ありがとう」の声を聞く機会にもなって、それだけで嬉しく親心は満たされます。逆に、老親から「体にいいから飲みなさい」と届けられるサプリメントには、気持はありがたいものの当惑気味。やっぱり「食べ物」がよろしいようで・・
ほんの気持ちです・・が人をつないでいるのです。
□「お返し」のいらないやりとりが好き。
おすそ分けには、お返しなしが習慣です。昔は、いただいたものが乗っていたザルに「ごちそうさまのおしるし」をちょこっと載せてお返ししていた風景を見たような気がするけれど、最近は、ニコニコと「ごちそうさま!」でおしまいです。
「いつも頂くばかりですみませんって言われると、私のところで食べきれないものでしたからって了解していただきます。だいたいは分ってもらえます」
「おいしいものを見つけると、人にもあげたいというのは自然な気持ち。愛情のおすそ分けなのよ。だから、すぐお返しなんて考えなくていいのよねJ
「でも、昔かたぎの人は、性分なのか、すぐキチンとお返ししたがる。そうされると却って軽い気持ちで贈りにくくなりますよね」
□貰いっぱなしというのも、一方通行すぎてつまらない。
あげたり貰ったりの楽しみに気配りをしない生活は、味気ないものです。
「モノが欲しいというのではないの。何かの時にはそんな心遣いができる人と付き合いたいのよ。絶対何もくれたことない人がいるけれど、そういう人とは疎遠になるわ」と断じる人もいます。人は持ちつ持たれつ。ふだんの生活の中で、ちょっとした手渡しものがあると、優しい空気が流れるものです。
「旅先からポンとモノが送られてくることがあるでしょ。あれって、旅先で私を思い出してくれたのかって、嬉しいのよね。モノが伝えられる心ってありますものね」「私ね、旅先でこまごまとお上産買うのってヘンと思ってたの。ところが、最近買ってる。 1000円以内のものなんだけれど、10個とか・・。そういうものを小分けしておいて、何かちょっとお世話かけた時に渡したりする。あると、訪ねてくれた人に渡したくなっちゃう」
「私もするわ。あっ可愛いなんていうものが旅先って見つかるのよ。それをいろいろ詰めて宝の箱のようにしてオフィスに送ったりするわ。そういうのって、軽く受け取ってくれて気持ちも和んだりする」。チャンスはいっぱいあるんですね。
□年賀状、お中元、お歳暮は、「ご無沙汰ゴメン!」のチャンスです。
「細い絆でもつながっていたい人との間では、本当に助かります。離れて住む学生時代の友人とか、何かの時には知恵が借りたい先輩には、この習慣が貴重です」と山本さんが言えば、「忙しくてお礼が延びちゃって、タイミング外しちゃったということはよくある。そんな方には、お中元お歳暮時期にありがとうの贈り物します。ずっと気になっていたのだし、済ますとホッと思い荷物下ろした気分になりますね」。
そうなんです。たいてい相手は長いお付き合いの間柄。何がお好みかも承知しているので、そこは「ゴメン!」がバッチリ伝わるあれを選びます。機知を思い切り働かせて。