2005年10月 発行所 「50カラット会議」
50カラット会議レポート
54号
お茶の時間ですよ。
温かいお茶がうれしい季節になりました。
「お茶にしましょうか」「そうね、何にする?」、お湯を沸かしながらの会話です。
「お茶」といっても、緑茶、紅茶、中国茶、ハープティ、健康茶、コーヒー等が並んで、迷うのも日常茶飯事。
一緒にいただくお菓子があれば、衆議ー決ですが、「いま何が飲みたい?」と声をかけようものなら、各人それぞれの答です。 それにお茶は、古今東西の文化を味わう身近かな存在。
イギリス貴族の館に伝わるアフタヌーンティの習慣やマナーは、紅茶への 関心を高めました。中国茶は皇帝の贅沢な食文化と国土の広大さに見合う多彩な種類に心奪われます。ピーターラビットの絵本が発端でハープティにのめりこんだ人もいます。
日本では、茶道がおもてなしの心を、お茶の間でのひとときは家族間の絆を育みました。 「お茶の時間」つて、幸せの衣を着せ掛けられる温かさがありますね。
蛇の道はヘビに聞くシリーズ54
文化を味わい 心身が憩うお茶をしましょう。
「お茶」のことならこの方にお話を伺ってみたいとお集まりいただいたのは、4人の方々です。洋菓子研究家で「お菓子と紅茶の世界は背中合わせ。アフタヌーンティのマナーを学びにイギリスにも行きましたし、毎年紅茶を求めて旅に出ます」という小菅陽子さん。香り研究家、ハーブをテーマに北鎌倉で「香り仕事」というお店を開く嶋本静子さん。『日本の朝ごはん』に精通し茶の間と生産者の心の絆にも関心が高い向笠千恵子さん。管理栄養士 医学博士 ハーブ研究家 日本紅茶協会のティインストラクター会々長で「勉強するって飽きないですよね」と知識の深みにはまる楽しみいっぱいの本多京子さん。お茶のお話の時間ですよ!
目次
1. 忙中茶あり。
古今東西の文化遺産が、体と心を温めてくれます。
2. 英国上流社会のマナー、モーニングティ、アフタヌーンティ。優雅さこそ「紅茶」の魅力です。
3. 中国茶とハープティ。健康の香りの裏に潜む歴史や伝説に、ドキドキワクワク。
4.体と心を優しく包むのは、温かいお茶。一日のどこかで、香りと効き目を美味しく取り入れたい。
5.お茶について、もっと知りたい。自然の薬効、飲み方の効果、昔の人たちのお茶への想い、そして伺より味と香りの広がりを。
1.忙中茶あり。古今東西の文化遺産が、体と心を温めてくれます
きちんと淹れた温かいお茶をゆっくり嗜むのがお茶の時間です
●食文化にひかれます ◇歴史と伝統に彩られた特権階級の文化に育まれたお茶
◇茶道の心、アフタヌーンティのマナー
◇伝説や童話で知った薬草やハーブの存在
◇風土が育む種類 ・製法・嗜み方・お茶の間・お茶菓子。
●お茶の時間にひかれます ◇ひとりゆっくり寛ぐ。素敵なティルームに立ち寄るのも自分リセットの大事な時間
◇「お茶でも」で始まる弾んだ時間があります。美味しいお茶とお菓子があると、「幸せの天使が降りてくる」といいますよね。
●お茶の効能にひかれます ◇頭と体を目党めさせます
◇気分が切り替わります。リセット)Jがあります。
◇食事の味を整えます。
◇緑茶、紅茶、中国茶、ハーブティ、各種健康茶… 飲み分けぶりはpart2をご参照ください。
ペットボトルのお茶は「嗜好水分」
いくら世の中大忙しとはいえ、お茶の時間は譲れないという人は沢山います。車での移動や屋外でペットボトルのお茶をいただくことはあるけれど、体の渇きが癒されるだけで、心のリセットには結びつかない。
きちんと滝れた温かいお茶をゆっくり味わう時間とは別物です。
地方に行くと、その家の生垣がお茶の木で、自家製のお茶は生垣から摘んだものだと聞くことがあって、ああ、これこそ地についた暮らしなどと感動します。お茶には生まれた国や産地が育てた香りと味があり、その文化の気高さや狂気にも似た歴史を知ればなおさら、心はときめきます。
イギリスの貴族の館に広がる庭園でのアフタヌーンティ、中国皇帝たちの気品と権力が匂うお茶、武士道から発したという日本の茶道料理研究家たちは基礎として「茶道」を学ぶそうですが、作法はもちろん玄関先の打ち水、片付いた部屋のしつらえなど、おもてなしの心を習います。
最近お茶は、その効能に注目が高まりましたが、お茶の時間こそ暮らしの潤い特効薬。体と心を温めるお茶の時間を惚れ惚れ暮らしたいものです。
お酒大好き
□あちこち旅したけれど、平和な国はお茶を楽しんでいるのね。
「1年に1回は、お茶を求めて旅をしています。いろいろな国のお茶とお菓子を調べたりしている。私のライフワークです。イギリス、ロシア、インド、中国と行ってみると、ティタイムはその国の食文化としつかり結びついているのを実感します,
どこの国でも、平和だとお茶を楽しんでいるなとすごく感じますね」とおっしゃるのは、洋菓子研究家の小菅陽子さんです。
小菅さんは「うちでは、仕事中でも必ず4時頃お茶で一区切り。またやろう1つて気になりますね。それに増えたのがおひとり様のお茶。家でも出先でもお茶します。せっかく来たのだからあそこでお茶にしようというティルームがあります。リセット時間ですね」と、お茶の時間の効用をお話になりました。
□「隠れ里の食」を求めていた時、あちこちで「家茶」に遭遇しました。
食材の生産現場から加工流通の過程をご自分の眼で確かめながら追っているという向笠千恵子さんは、都会で流通しているお茶ではない「隠れ里のお茶」に感動しています。「この時代でも、農村の山間部では山茶という形で「家茶」を作っています、家の周りにお茶の木を植えてらしてね。芽吹きの時期になれば、それを楽しみに刈り取って、窯煎りという方法で庭先で煎ったり、蒸したりして、自家用の暮らしのお茶にしているんです。それが特別なことと思わないで飲んてらっしゃるのて、びっくりしました」
季節の移ろいに合わせた静かな暮らしとお茶の時間が伝わってくるお話です。
□お茶でも と落ち着いた時間が始まります。
北鎌倉でハーブのお店を開く香り研究家 嶋本静子さんは、「お茶がなくてお話するのは立ち話みたいで落ち着きませんね。そのお茶がどうこうと話すわけではないけれど。お茶は歓迎の気持ちを伝えるしるし」と、お茶を用意しています。最近は、粗茶でございますが などという言い方も聞かなくなりましたか、お茶のある空間の穏やかさは、昔も今も変わりません。
□気ぜわしい日々ですもの、紅茶を飲むロケーションを愛しています。
「仕事をし、家事をし、子育てをしという生活を続けてきたので、お茶の時間はおいしさだけでなく、ゆとりの時間として大切にしてきました」と振り返るのは、本多京子さん。
「お茶の時間は、娘との時間でした。紅茶が大好きなので、子供にお茶のマナーを 教える小さなティセットを買って、娘と一緒に紅茶を入れて、お砂糖いくつ入れる?どかミルクは入れますか?という会話を通して、娘とセレモニーを楽しむということをやりました。15分でも30分でも楽しく一緒に過ごすためには、紅茶と音楽が欠かせませんでしたね。紅茶にはフルートが合うと思いません?」と、ニッコリでした。
2.英国上流社会のマナー、モーニングティ、アフタヌーンティ。優雅さこそ「紅茶」の魅力です。
忙しい日々だから、優雅な時間が必要です
カフェインがあることで共通のコーヒーには、「仕事場の頭スッキリ飲料」のイメージがある。机の間を歩きながら、しゃべりながらのコーヒー。けれど「紅茶」は一段落しての「ゆったり飲料」です。
●伝統の様式美にあこがれる 日本の茶道と同様、英国式のお茶にはマナーがある。イギリスにティセレモニーを学びに行き、すっかり紅茶にはまりました。
●お茶の時間の優雅さにあこがれる ベッドの中でモーニングミルクティカフェや庭先でのミルクたっぷりのアフタヌーンティ。ポットやティカップのセットにも憧れは広がるばかり。
●クッキー、ケーキ、サンドイッチ感覚にあこがれる
洋菓子への憧れと紅茶は一体。戦前のハイカラ文化にはまっていた親は、ビスケットやクッキー、ケーキに夢中でした。
出先での一休みは「ひとりでお茶する」贅沢な時間です
家庭でもオフィスでも、午後3時か4時頃に、「一旦休憩!」の習慣があります。というわけで、外出先でも、帰る前に気持ちを入れ替えるティタイムをつくる人は案外多い様子です。
「椿山荘のフォーシーズンズのティルームで、しばしひとりの時間を過ごします」を習慣にする人があるように、ホテルのティルームはみなさんお気に入り。ただ時間をやり過ごすためではないので、空間の贅沢さも、お茶の時間の大切な要素になりました。紅茶の種類も、香りや風味の濃淡くらいは覚えがあるので、その日の気分、頭の疲れ具合で選択するのだそう。
仕事中はコーヒー、オフタイムの雰囲気には紅茶なのでしょうか。紅茶は、集いのお茶でもあり、一人の時間を潤すお茶でもあるのです。
昔から、水とお茶はただ(無料)と思われてきた日本で、一杯1000円を払うのは、他ならぬ伝統文化と歴史への敬意でしょうか。
紅茶に夢中
□イギリスで紅茶がしきりに飲まれるようになった頃・・
「イギリスは夜のごはんがかなり遅いこともあって、ある伯爵夫人が、お腹がすく4時か5時頃お茶の時間を設けてお友だちを招いたのが、アフタヌーンティの始まり。
お招きするときに、キレイなカップやポットを見せびらかす楽しみもあったでしょう。それで広まったということです」
「18世紀に、中国茶や中国茶器がいっぱいイギリスに入っていますね」「最初に中国から入ったカップには取っ手がなかったのよね」
「それでカップに取っ手をつけた。それに、昔はソーサーに紅茶をあけて飲んだんです。だからウェッジウッドの容器は、カップとソーサーの容積が同じなんです」「お茶が入ってきた時と、食器が分かれ始めた時、お砂糖が入ってきてお菓子ができた時、みんな一緒。時期が熟していたのね」と、さすが皆さんお詳しいのです。
□レモンティとミルクティ
「日本に紅茶が入ったときに、お砂糖とレモンを入れて、ショートケーキやシュークリームを添えてというのがありました」
「私の母の世代は、いまだにレモンティって言います」「紅茶にレモンを入れるのって、サンキストとかああいうところの戦略でしょ」「あれは、アメリカン」「イギリスでは、レモンティのことは『ロシアンティ』といいます。ロシアではみんなレモンティです」
「イギリスはミルクティですよ。酪農国ですもの。レモンがついてくるなんて信じられない!もともとは、アイスティなんかも飲みませんでした。体型を変えないように努力していらっしゃるエリザベス女王は、イギリス人なのに紅茶にミルクを入れないんです。何故かというと、1週間に1度、大好きなチョコレートブラウニーを食べながら紅茶を飲む楽しみがあるからですって!」
「紅茶の消費量世界ーは、アイルランドなんですって!イギリス本国じゃないんです」
□日本の紅茶
「この頃は、どこの緑茶の産地でも、国産紅茶があります。いままでは自家用に楽しんでいたものが、スローフードという言葉の普及と共に、伝統食品普及の一環として国産紅茶として台頭してきたのです。実は、明治時代に政府が輸出商品として、緑茶だけでなく紅茶も国産で作って、アメリカなどに出そうとしていた。一時期、国産紅茶をしきりに生産奨励していたのです。でも、価格や品質の面でうまくいかないで立ち消えてしまったの。それが近年の国産紅茶見直しの機運で復活してきました」と向笠さん。そういえば、観光地で紅茶のお土産が並んでいますね。
3.中国茶とハーブティ。健康の香りの裏に潜む歴史や伝説に、ドキドキワクワク。
●中国茶は、皇帝の贅沢と「医茶同源」思想の賜物
最高級のお茶は、その時代の権力者の文化度だった。値段はつけようがなく金より高いお茶がある。 種類は広大な国士の分だけ多種多彩。
由緒履歴を知ったら、もっといろいろ飲んでみたくなりそうよね。
●日本での現状
中国茶は「ジャスミン茶」ハーブは「カモミール」が一般入門種。「体にいいから」だけでは、深みにはまりにくい。おいしい茶葉や飲み方を学ばないままだから、夢中になれない。
●ハーブティはヨーロッパ風土への夢を掻き立てる 僧院の秘草、魔女たちが作る薬の材料、「ピーターラビット」に登場する薬草。ハーブは野山畑に野生する薬草。
効能+嗜好的飲み方で今風に楽しむ工夫はこれからの課題。
美味しく飲んで、かの地の物語に思いを馳せる
「ハーブ」の語源は、ラテン語の「herba」。緑の草という意味で、元々は、地中海沿岸地方で、健康に役立つ植物というのが大きな定義です。
医学部のある大学にある銅像ヒポクラテスという人は、医学を最初に科学的にみた人ですが、そのヒポクラテスの治療がハーブ治療。そのころのおまじないに代わって、植物を煎じて飲ませる薬草療法が始まりました。
イギリスの民話「ピーターラビット」にも、カモミールで風邪を予防するお話が出てきますが、「白雪姫」「眠りの森の美女」に出てくる魔女たちも薬草をいろいろ混ぜて大きな釜をかき回しています。魔女たちは、益草とか薬草について熟知していなければいけないという掟があったらしいのです。
本多京子さんは、「ハーブのお店をやるなら、名前は『魔女の釜』と決めていたの。美と健康を司る魔女は、緑のマントなんですよ。店のキャラクターは緑のマントを着た魔女とも決めていました。ハーブは、ローズマリーにはマリアの薔薇という意味や海のしずくという名前の由来もあって、知れば知るほどはまっちゃう」かの地の伝説でハープの世界に引きずり込まれたとニッコリです。
中国茶にしても、三千年の歴史といわれる漢方は、東洋原産の健康に役立つ植物を厳選したのですから、そこに情熱を傾けた人たちの物語は、時の権力者
の美と健康への欲望と共に私たちの興味を掻き立てます。
中国茶は、烏龍茶とジャスミン茶だけではありません
□「東方美人」(オリエンタルビューティ)
台湾の中国茶の一種に「東方美人」というのがあります。
「あれは、葉の部分についた虫、ウンカのお陰でおいしいのね」と向笠さんが中国人の感性への関心を口にすると、中国茶談議が花開きました。
「紅茶で、そういうものがありましたよ。ファーストフラッシュとセカンドフラッシュの間にウンカが付くんですって。そのウンカがかじったお茶が、香り高くなる。その中にウンカは入っていないんですよ。ウンカの吐き出す唾液とかで味わいが出るっていうことでした。高雅な香りでしたよ」と嶋本さん。
*「東方美人茶」別名[香梹(しゃんびん)烏龍茶J。台湾の新竹県である夏ウンカか大発生して茶葉を吸われる被害があり、売り物にならなくなった茶架てお茶を作り売ったところ、今までにない蜜のような廿さが評判になってオリエンタルピューティと名づけられたとか。
□冷たいウーロン茶?
ペットボトルで親しんだけれど、中国では「冷たい烏龍茶?健康効果がないのでは?」と首をかしげられているのだとか。日本独特な飲み方のようです。
「アメリカ的な考え方なのでしょうね。食中飲料として冷たいお茶を飲む。アルコールの代わりですね」。
□中国茶は、様々。
「中国茶の場合は、緑茶系もあれば、半発酵のものも、完全発酵のものもあろ」
「種類がいろいろですね。広いし、奥も深い。国土の広さだけお茶があるのよ。紅茶もやっぱり、ダージリン地方に行くと、農園によって少しずつお茶の香りが違いますが、中国はもっとすごい!産地で香りが全然違うんです。いちど、10年位寝かしたお茶を飲みましに何故美味しいのかは理解できなかったけれども、10年ものは体にいいという説明でした」
「紅茶の楽しみ方は、春摘みのファーストフラッシュ、初夏摘みのセカンドフラッシュ、秋摘みのオータムナルって、季節の中での変化を追うけれど、中国茶ば、何年も寝かせていく。磚茶(てんちゃ)みたいに固まりを作って、麹菌をつけたりして、更に進化させたり、すごいですよねJ
「そこに健康を打ち出していますからね。紅茶の楽しみ方とは違い主す。
□中国茶のセレモニー
日本の茶道は武士道、紅茶はイギリス貴族流、そして中国茶は皇帝の作法です。「女性と男性では、飲み方が違います。女の人は、口を隠すようにして飲むのよ。中国茶は、もともとは茶器もいい加減で、お酒を飲むお猪口で飲んでいましたけと、その後、日本の茶道の男点前、女点前みたいに流儀が出来ていったのでしょうね」。小菅さんは、アジアの国、となりの国という近さを感じたそうです。
4.体と心を優しく包むのは、温かいお茶。一日のどこかで、香りと効き目を美味しく取り入れたい。
体と気持ちの立て方に役立つお茶を飲みましょう
朝、家事や仕事の合間、食事どき、一日の終わり、週末の特別リラックスetc。それぞれに「かくありたい」目的がある
●香りが好き 「香り=品質」フレーバーティはごまかし、本物の香りが好き。香りは習慣になると、脳が反応する。食欲増進、快眠鎮静、緊張緩和、集中力の高揚など。
●体にいいものが好き お茶の魔力はカフェイン。お寺のお坊さんは茶葉をかんで眠気覚ましに。ハーブティはそれぞれの効果が必要な場面で飲み分けたい。カフェインレスなのも利点です。
●おいしく飲みたい お茶の味は気候風土土壌と発酵度合で決まってくる。日本茶は「故郷のお茶」、中国茶、紅茶は海外旅行で体験を重ねて、「香り=味」の入れ方を学び始めた。ハーブの味づくりの配合は難しい。プロに任せたい。
美味しいハーブティはありますか?
ハーブを自分で配合できる人は、そうはいません。
ハーブ教室に長年通っても、自分の体調や食場面に合わせ、しかも美味しいという配合は中々難しいようです。
日本に洋食が入ってきた時にハーブが抜け落ちていたという歴史もあって、ハーブの美味しさや使いこなしを学ぶ機会がなかったのも一因です。
けれど、ガーテニングの流行でハーブを育てる人も増えて、庭のレモングラスやミントでハーブティを楽しむと、顔をしかめて飲んだ昔のアレは何だったのだろうと、その爽やかさにびっくり。
ペパーミントで朝の体を目覚めさせる、ローズマリーで仕事する頭を集中させる、夜はリンデンバームの香りで安らぐなどなど、知識が増えてくると、試してみたいハーブティが出てきました。が、その美味しい飲み方、効果的な飲み方となると手探り状態。一日のあちこちで飲む美味しいハーブミックスを待ち望む所以です。
ハーブティへの気持ち
□「お茶の歴史では、ハープティが一番古い。
ハーバードハウスというハーブ店を20年余やりましたという本多京子さんは、ハーブの広がりについて、次のように話してくたさいました。
「ハーブティは昔、薬草としての期待で飲んでいたので、歴史は古いのです。でも化学薬品ができてから、ハーブはクスリみたいな即効性がないので、薬としての期待は薄まりましたね。
けれど、アメリカでヴェトナム戦争の反戦運動が起こって、サイモン&ガーファンクルの歌った『スカボロフェア』の歌詞にハーブが出てくる。みんなが忘れていたものたけれども、自然とか環境とかを大事にするというヒッピーたちの運動で、ヨーロッハで衰退していたハーブが見直されたんです。
日本では、自然志向の人とかおしゃれ感で珍しがられたけれど、持続しにくかったしむしろハーブは、アロマテラピーで広がりました。
私がハーブに夢中になったのは、魔女の世界への興味からです。ハーブで人の心を操作する魔女の存在!それに、ピーターラビットの世界。ピーターラビットのお話の舞台、イギリスの湖水地方、セント・ハーバート島などにも行きましたよ。イギリスの公園にはハーブに囲まれたベンチもあって、ハーブを伝説まるごと受け入れている感じかあります。いずれにしましても、気ぜわしい暮らしの中で、時間と心のゆとりがないと、ハープをあれごれ楽しむのは難しい。最近はイギリスでも、アメリカナイズされたティバッグでブレンドが出てきて、美味しくなりました」。
□ハーブティは、それ自体が「寛ぐお茶」なんです。
北鎌倉でハーブ畑をつくり、香りのお店を開いている嶋本静子さんは、ハーブティが定着してきたのを実感するとおっしゃいます。
「普茶料理や精進料理ばかりの鎌倉にハーブのお店って、立ち寄ってくださるけれどこの数年、ハーブの雰囲気を楽しむ人が増えたと思います。
ただ、ハーブって、どんなにしても美味しいっていうより、ほっと安らぐ香りのお茶。
私の暮らしにキチンとはいっているのは、風邪予防のカモミール。ちょっと薬草っぽい甘さが苦手なんですけれど、大きなカップにいっぱい飲むんです。
ピーターラビットでも、ピーターがマグレガーさんの家の畑に入って、追いかけられて水かけられて風邪ひいて、お母さんがカモミール茶を飲ませたでしょ。カモミールは、体が温まって汗が出て、いいんですよ」
小菅陽子さんも、「ハーブティって、すごく美味しいというより、ピーターがお母さんに飲ませてもらっているという、あたたかい光景が浮かぶのよ。懐かしい寛ぎの気持ちが広がるんです」。クスリを飲むほどではないけれど と体と心をリラックスさせたいときには、なにやらぴったりというのがハーブティなのでしょう。美味しく飲む工夫、知りたいですね。
ばの蜂蜜は本当に初めての人には堆肥の匂いなの。リコッタチーズにそばの蜂蜜?オーッ!っていう感じのとき、白こしょうをパッとかけたんです。
そしたら、匂いが消えちゃった。何かそういう獣臭というか堆肥臭というか、アミノ酸過多な匂いには胡椒が効くんだと思いました」。
5.お茶について、もっと知りたい。
自然の薬効、飲み方の効果、昔の人たちのお茶への想い、そして伺より昧と香りの広がりを。
温かいハーブティには、体と気持ちをなだめるように広がる香りがある。女性たちの共感は大きい。
●食事とお荼
和食には緑茶がいい。食材の味の濃淡を調和させ、食後の満足感にとどめを送る煎茶番茶ほうじ茶の役割には舌を巻きます。
「イギリスの女王陛下のディナーパーティはコーヒーが出ましたよ」と本多さん。 お茶は午後用なのかしら?
●くつろぎのお茶
温かいお茶がいい。
冷蔵庫から直行してくるより熱いお湯を注いで香り立つお茶が飲みたい。香りはくつろぎ効果として欠かせない。花の香り、森の木の皮の香り、甘い香り、渋い香りと好き好きだけれど、共通は気高さでしょうか。
●体をキレイにするお茶
新陳代謝を高め、血のめぐりをよくするのに、お茶の成分が一役買います。
肌荒れ、内臓機能低下、便秘、喫煙や飲酒による弊害などを意識してお茶を選びはじめました。過飲過食の調整効果、解毒効果も最近の関心事です。
緑茶・紅茶・中国茶ハーブティの飲み分けと使い分け
北鎌倉でハープのお店を開いている嶋本静子さんは、「若い人たちがハーブティを美味しいって言うのよ。香りが気持ちいいって 」と、ハーブティファンの気持ちを教えてくれました。
そういえば私たちの青春時代に、サイモン&ガーファンクルは「スカボロフェア」の中で、いくつかのハーブの名前を織り込んで歌っておりました。
アメリカのヒッピー文化の幻想的な歌声に、「パセリ、セージ、ローズマリー&タイム」と、旅人が魔界に引き込まれない魔除けのハーブとして登場していましたが、自然にかえろうという気持ち表現だったのでしょうか。
中国茶にしても、街にファッショナブルな茶館を見ることはありますが、中国料理店ではまだまだジャスミン茶一点張りが多いのです。上海、広小卜1、四川、北京と料理の味が変わっても一律ジャスミン茶。そろそろ変わってくる頃でしょうか。
体にいい飲み方
□のどの渇き
医学博士でもあり管理栄養士でもある本多京子さんは、スポーツ選手の指導にも当たってきました。「温度と飲み物の温度には関係があります。スポーツ選手を指導する時がそうなんですが、炎天下でi干をかいている時は、冷たいものがいい。5℃というのが、吸収される適温なんです。けれども、涼しい部屋に帰ってきたら、外と同じではダメ。温かいほうがいいのです。涼しい所では熟いお茶を飲むようにすれば、必要以上に量を飲まずに渇きが収まります。そうすればむくまないし、心臓に負担がかかりません」。
□体は冷やさないほうがいい。
「物理的に考えると、冷たいものを摂れば冷える。皮膚の血管は外が暑いと開きますし、寒ければ収縮します。それで体温調節されているわけです。
でも、内臓の血管には、そういう能力はないのです。だから、冷たいものが入ってくれば冷えるし、温かいものが入れば、バーッと温まる。とにかく、物理的な温度が温かいことが一番です。更年期の人は、冷えとのぼせが同時に起きていますから、冷やすだけじゃダメですし逆に温めたほうがいいですよ」。
□日本の薬草茶
「日本のお茶は緑茶、ほうじ茶、番茶位しかないと思っていたら、実は薬草茶の世界も長い歴史があるようです」と向笠さんがお話くださいました。
それでも、一時流行した「おばあちゃんの知恵風薬草茶Jも、今では煎じるヤカンもありませんし、ドクダミ茶から麦茶まで、すっかりペットボトル任せの有様。
都会では、自然から力を借りる薬草茶の風雅さは探しようもありません。お茶をご飯とあわせた茶粥やお茶漬けもいろいろ。ぼてぼて茶は、出雲地方で女性たちが集まって作って楽しんだ具だくさんのお茶漬けです。番茶を茶せんで泡立て、かんぴょう、しいたけ、高野豆腐の煮たもの、菜漬け、シソの実、黒豆などを入れて食べるお茶漬けです。茶せんで泡立てる音を表現して、ぼてぼて茶だとか。
□幼児子供も、牛乳よりお茶を選ぶんですって?
いま、保育園でもお茶が人気だそうです。「牛乳とヤカンに入った麦茶が出てくると、子供はお茶の方を選ぶそうですよ。ペットボトルで飲み慣れているんですね。親は学校で牛乳を飲んできてると思っているけれど、実は違う。牛乳を飲んでいるのは中高年なのね。ペットボトルのお茶も、緑茶や紅茶はカフェインが入っているわけだけれど、お母さんたちは認識しているのかしらね」。
娘たちが結婚したり、孫が生まれたりで、次世代の健康も気になる50代でした。