2008年2月 発行所 「50カラット会議」
50カラット会議レポート
68号
“超生物”50代からの免疫力
「生きているといろいろな免疫がつく」と簡単に考えていたので、年齢を重ねれば免疫力は高まると思っていたのに、近年花粉症デビュー。
その原因の1つが「免疫力の低下」と知って、ええっ、免疫力って何?と疑問を抱えておりました。
そんな折、出会ったのが、免疫学者の安部良先生です。
「素人にも分かるように、老化と免疫力の関係を教えてください」とお願いしました。 Part 1は、安部先生のお話のご報告です。
生物としての人間の体のしくみの精緻さに驚き、且つ、「超生物」になった50代からの人生を健やかに過ごすための体への配虜を学びました。
老衰という究極の自然死への道も、生活環境の複雑さに対する賢いバランス感覚がないと全うせないようです。
蛇の道はヘビに聞くシリーズ68
「免疫の話」(食の寺子屋主催)を東京農大に聞きにいったところ、免疫学者の安部良先生の話があまりにも面白かったので、もっと話を聞かせてください、とずうずうしくも研究室まで押しかけました。
安部良(あべりょう)先生 東京理科大学生命科学研究所所長。
医学博士。日本免疫学会員。
1951年東京生まれ。
内科医として病院勤務後、免疫学の面白さに魅せられて、多田富雄先生のもとで研究生活に入る。米国で研究を続けたのち帰国。2007年より現職。
目次
目次
1. 免疫学からみると、ヒトは50代から生物を超えた“ 超生物”としての新しい道を歩き出しているんです。
2. 老衰とは冬眠と同じ。徐閃に全体の機能が衰えてくること。ところが免疫は突然ボケて暴走を始めることがあるのです。
3. 50代からのアレルギーは免疫のボケではない。免疫バランスの崩れです。
4. 更年期には、体の中でとんでもないことが起こっているのです。 5.“超生物’’は、免疫バランスが多少崩れても、免疫の教育をする胸腺が残りカスになっても、生きていける。 6.“超生物”の免疫力強化には、脳を味方につけること。ストレスコントロールできるかどうかが勝負です。
7.50代から免疫力を強くする方法。お腹をすかせ、体を動かし、深く眠る。免疫系が進化してきた大昔の菖らしにもどろう。
1.免疫学からみると、ヒトは50代から生物を超えた“超生物”としての新しい道を歩き出しているんです。
老化すると免疫力は低下するのか。
それは免疫力というのをどういう風に考えるか、ということだと思います。われわれ人間の寿命がいくつくらいかというのは、いろんな考え方ができる。もっと生きられるかもしれない、ということを寿命として考えるのなら、今の平均寿命が延びる曲線を考えると、120歳とか150歳とかなるのでしょう。
しかし、次世代を残すという生物の原則を考えると、50歳を過ぎたわれわれはもう必要ないですからね。そういう意味では、50歳まで生きれば充分すぎるほど充分だということになります。
老化ということを考えるにしても、私自身もそうですが、今から80歳、90歳まで元気で生きていたいと思うと、ただ単純に寿命とか老化とか、生物学的なことを考えるだけでは済まされない。相当難しいことをしていかなければいけない、と考えたほうがいいんじゃないでしょうか。別の言い方をすれば、昔は死亡率の第1位は感染症、今はガンが1位です。 でも、ガンが増えたかというと、そんなことはない。要するに、昔はガンになる前に死んだということです。
20世紀の初めくらいはヒトの平均寿命はずっと若く30歳とか40歳だったと思われます。その頃は何で死ぬかというと、たいてい感染症で死ぬわけですね。次の世代が生まれてくる30、40代までの間に充分生きて、元気で活動できれば、遺伝子、つまり種をその次に継いでいくことができる。それで充分なわけですね。 いうなれば、「免疫」という、体がもともと持っている力は、生物学的には30、40代までが生きるために作られてきた、と考えるのが一番自然だと思うんです。ただし、栄養の状態がよくなってくる、衛生環境がよくなってくる、病気になっても抗生物質があるなど、人間の進化の過程で「生物の寿命」を超えた世界で免疫の話を考える必要がでてきました。
40歳、50歳を過ぎたら生物を超えた“ 超生物” 。人間としての新しい特別な道を歩きだしているのです。
2.老衰とは冬眠と同じ。徐々にに全体の機能が衰えてくること。 ところが、免疫は突然ボケて暴走を始めることがあるのです。
老衰というのは生物学的にいえば死ですね。われわれ人間にとって、他の動物との最大の違いは予想する、予測する力の有無ですね。
だからこそ怖いのは、死ぬということ。死ぬことを怖がるわけです。けれど、ある歳になると、苦しまなければ死んでもいいかな、と自然に思うようになるわけですよ。もちろん、ある歳になるまでそうは思わないでしょうけれども。
老衰というのは、ある意味では最高の死に方ですね。細胞の1つ1つ、人間の器官、臓器、生体のシステム、そういうものがガタッと崩れるのではなくて、だんだん遅くなっていって、とまっていくのですから。先日、冬眠のメカニズムの話を聞きました。その時、老衰と冬眠の共通性を感じました。シマリスは1分間に140回心臓を動かすのですが、冬眠のときは6回しかしない。冬眠している間に時々目を覚ましたりするらしくて、それがないと死んじやったりするらしいですけれど。
冬眠中は、細胞の1つ1つが、老廃物を出したりエネルギーを出したりする代謝が100分の1に落ちて、使うカロリーが100分の1くらいになっちゃうわけですね。おそらく、老衰というのは、だんだん全体のレベルとして活動が少しずつ遅くなっていく。バランスよく遅くなっていくのが、老衰による死だと思うんです。
老衰というのは、体の中でだんだん恒常性(ホメオスタシス)が維持できなくなる、そういう状態だと思いますね。免疫の中で老衰とは何かというと、免疫というのは、あたかも自然に器官を働かなくなるようにしている、その原因になっているようなところが見られるようです。
免疫の老化には、2つのことがあります。
1つは免疫特有の力である、自己か非自己かの識別がだんだんできなくなる。免疫は基本的にはデジタルで、プラスかマイナスか、自分か自分でないかを判断するから成立っています。免疫の老化はそこが曖昧になってくる。まさに脳の老化とまったく同じです。要するにボケてくる。自己と非自己がわからなくなってくるから、肝臓だとか腎臓だとかにリンパ球が入り込んでいくわけです。自分のなのか、人のなのかよくわからなくなっていきます。
もう1つは、体の中の老廃物を処理しようとして、逆に死に近づいてしまう。
若いときは老廃物を非常に効率よく処理する能力があるわけです。代謝率がいいですから。だから何を食べてもいいわけですし、いくら食べたっていい。しかし、歳をとって、だんだん代謝の効率が悪くなってくると、老廃物が血管の中にたまっていく。血管の中にたまっていくと、それを処理しようとして免疫細胞が働く。老廃物は異物ですから。 例えば、脂肪の塊、コレステロールの塊は異物ですから、取り去ろうと思って免疫が働きます。これは免疫本来やるべき反応ですからボケてないわけです。
ところが、このコレステロールを貪食細胞が食べると、サイトカインがでて炎症がおき、そこが血管炎になって、動脈硬化になる。動脈硬化が起これば、血流が下がって、さらに代謝が悪くなる。最後は、悪くすると心筋梗塞や脳梗塞になってしまいます。
これも、40歳になるまでは大丈夫なんですよ。老廃物なんて、ちゃんと処理できますからね。だけど、ある年齢から先にいって、過剰に食べたりなんかすると、免疫がそれを体の中で処理しようとして、逆に体にとっては死に近づいていくような道筋を、結果としてやってしまうことにつながります。
3.50代からのアレルギーは、免疫のボケではない。免疫バランスの崩れです。
自己免疫疾患は、免疫のボケ。50代を過ぎるとリューマチになりやすくなるのはボケです。自己と非自己の境界があいまいになってくる、これはボケの1つです。でも「免疫のボケ」はそう節単には起こらないんですよ。だから、自己と非自己の識別ができなくなるのと、アレルギーはちょっと違います。アレルギーの場合は、おそらく免疫のバランスが崩れてくることだと思います。
免疫反応というのは、バランスなんですね。
例えば、TH1細胞とか、TH2細胞というのがありまして、炎症を起こすのはTHl細胞だし、アレルギーを起こしたり抗体を作るのが、TH2細胞。昔は恐ろしい寄生虫がいましたから、これをやっつけようとしてTH2が働いていていた。細菌やウィルスなんてちっちゃいものですけれども、寄生虫なんてモンスターが体の中に入ってくるのですからね。そんな大きな寄生虫をやっつけるなんて、大変な仕事だったわけですよ。
だから、肥満細胞ができあがって、ヒスタミンなどを総動員して激しい炎症を起こし、免疫に関連する細胞とか抗菌物質をすべて動員して、あの大きな寄生虫をやっつけようとするわけですね。何億年か何千万年か知りませんが、こういう敵がウジョウジョいる環境の中で、私達の免疫系は進化してきたのです。私達の免疫系というのは、ものすごく長い間に作られたものなんですよ。この人類の長い歴史の中でその環境にあった形でバランスをとって、生体防御をおこなうのが免疫なのです。ところが、この人類の長い歴史の中で今の生活なんてほんとに手前のちょろっとしたところです。このちょろっとしたところで環境がいろいろ変わった。寄生虫がいなくなった。衛生環境が良くなり、生活の中での細菌との遭遇もぐっと減った。
逆にダニが、今は住みやすくなって一年中いるとか…。
このぐらいのちょろっとしたところで起こってきたことにあわせて、これだけの長い歴史の中で、うまく働くように出来上がった免疫のバランスはそう簡単には変えられない。そりやもう無理というものです。スギが増えた、空気中の大気汚染物質が悪さをする、こういうことだけではなく、このバランスの崩れが、最近、アレルギーがすごい勢いで増えている原因の重要な要素だと思います。
子供の頃のアレルギーは、TH1やTH2のバランスがとれていませんが、しつかりした免疫系ができあがってくるにつれて治ってくるものです。ところが、50代になってアレルギー反応が出てくるというのは、バランスがとりきれなくなってくるということだと思います。 たとえ40歳までだって、かなりバランスをとるのが難しいのに、 50歳以上は“ 超生物” ですから、バランスがとりきれなくなってくることが、どんどん表面化してくる。まだ40歳くらいだと、こっちにいったらこっちに戻すということができていたのが、できなくなってくるということです。その上、50代になるとストレスだのホルモンバランスの崩れなどがあり、免疫バランスの危機が訪れてくるわけですね。
けれども、100歳になった人はアレルギーになるかどうか。たぶんそんなにアレルギーはないんじゃないかと思いますよ。アレルギー反応だって、相当に細胞が元気で、ヒスタミンをバンバン出すということにならないといけないわけだし。
アレルギー反応は、いろんな細胞が相互作用を起こしてIgEを出し、IgEが肥満細胞に結合して、それをまたIgEが認識してヒスタミンをバンと出す。相当立派なことをやっていくわけですから。
他のこともあまりできなくなってくるのに、アレルギー反応だけをやるということはあまりないから。 上手な歳のとり方というのは、どこかだけが悪くならないようにすること。それが、結局は気持ちがいい歳のとり方だと思うんです。
だけど、そこが難しいところでね口最大の問題は、“超生物”になってからは、相当努力しないといけないわけですよ。上手に歳をとるというのは、人間として何億年、何千万年かけて進化した状態を維持できるように、上手に工夫して暮らすことなんじゃないかと思います。
4.更年期には、体の中でとんでもないことが起こっているのです。
いや、これは大変なことですよ。
更年期も、昔に比べてどんどん後ろの方にいっていると思うんです。私の勝手な想像ですが、昔は、おそらく30オとか35オくらいで更年期になった可能性があると思う。だから、今のはかなりの部分が’’超生物“的な時期の出来事になっているんじゃないかな。更年期に起こる女性ホルモンの激減で、免疫にどんな変化が起こるかというと、ホルモンは免疫細胞に直接、間接的にものすごく作用しています。
われわれにとっての体のソフトというのは、免疫系と内分泌系と神経系ですよね。これはトライアングルになっていて、常に相談しながらやっているんです。どれひとつとして欠かせない。お互いにお互いの道具を使いながら、共通の言語を使って協力しあっている。
その言葉の重要なやつは、ホルモンなんですよ。だからホルモンが下がれば今まで使っていた言葉の一つである分子がなくなるわけですから、免疫にとっては大変な問題ですよね。ですから、TH1、TH2のバランスがガラッと崩れることも、大いにあります。

免疫のバランスがくずれたために、困った疾患が表れる。いちばん典型的なものが、アレルギーです。アレルギー性の疾患。
それから炎症反応なんかもそうですね。ちょっとしたことで、すぐ膿んできやすくなる。いわゆるステロイドホルモン、これは典型的なホルモンで、炎症の行き過ぎを抑えるようなホルモンなんです。女性ホルモンというのは、ステロイドホルモンと、もとの原料は同じで、非常に似たような性質を持っている。だから、女性ホルモンのエストロジェンには炎症を抑制するような作用があります。
そういう意味では、エストロジェンが下がるということは免疫細胞の機能を上げる、という解釈はできるんですけれどもね。
でも、人間はバランスですから、あるところだけ強くなったらいいかというと、そういうわけにはいかない。ほかのところも全部バランスよくならないと、免疫が強くなったことにはなりませんから。みなさんも経験なさっていると思いますけれど、風邪をひいたら熱があがる。これは免疫系の細胞が発熱物質を出して体温を上げているのです。ウィルスは環境の温度が上がると元気がなくなる性質があります。逆に体の抗菌物質や免疫細胞はかえって力強くなる。
イメージとしては、熱が下がったから体の中にはウィルスが全然いなくなったと思うけれども、必ずしもそうではない。でも、体の中ではウィルスと戦う態勢が整っているから、体温を高くしておく必要はなくなる。
それよりも、炎症が強くなりすぎると、慢性の炎症に移行する。そうすると組織破壊が起こったりするので、適当なところで抑える作用が必ずあります。
そうしないと、ありとあらゆる外来の異物と戦わなければならないのに、ひとつにこだわっていたらとてもダメですよね。
必ず、適当なところで抑える。そういう仕組みになっているのです。ところが、律儀なデジタルな免疫は、大した敵じゃないウィルスが入ってくると異
物だからといって、真面目に徹底的に拒絶、排除しようとするわけです。ほったらかしておけばいいのに、よけいなことをするものだから、どんどん炎症が強まっていく。しかもそれが、簡単に壊されて排除できるようなやつだったらいいけれど、外に排除できないと、攻撃がどんどん続いてしまうわけです。それが肝臓でおこると、慢性肝炎になって肝硬変になって、悪くするとガンになる。うまいこと免疫反応が起きていないわけですね。
自己免疫疾患が怖いのは、いつまでたっても免疫反応がなくならないこと。敵と間違えたのが自分ですからね。自分を殺すまで、ずっと働き続けて、自分の体を破壊しつくすまでやる、恐ろしいですね。
自己免疫疾患の本当の原因はまだわかっていませんが、そのひとつが、免疫のバランスの崩れと考えられています。TH1とかTH2とかのバランスもそうですが、もうひとつは抑制性のT細胞とか、調節性のT細胞といわれているリンパ球のバランスが崩れるからです。「免疫がボケる」ということには、自己と非自己の識別がだんだん曖昧になるということに加えて、負に制御する、もういいからやめなさい、というような力も落ちてくるんじゃないか。そういう可能性もあります。
5.“超生物”は、免疫バランスが多少崩れても、免疫の教育をする胸腺が残りカスになっても生きていける。
「胸腺」というのはT細胞を作るところですから、50代になって胸腺が小さくなるとT細胞の質がちょっとずつ変わってくるようです。ただ、T細胞の数はそんなに変わりません。T細胞は、もともと骨髄からできて胸腺を通ってできあがっていくわけですが、胸腺が相当小さくなっても、機能はある程度保たれているようですね。
不思識な、ありがたいことに、胸腺が小さくなったからといって決定的に全部なくなっちゃうことはないわけです。免疫細胞のT細胞がなくなるとか、B細胞がなくなるとかはないわけです。
死ぬ前に全部なくしましょう、なんていうことは、進化の過程で必要がなかったのでしょう。たまたまぼくらがこういう時代に至ったわけで、何千万年、何億年の間の進化の過程では、ボクらのことなんて考えてくれてないわけですよ。
もともと、胸腺が小さくなって機能がなくなった状態なんて、昔々、何千万年もかけて免疫系をつくりあげたときには、想像もしてなかったんです。そういうのは勘定に入ってないんです。更年期を過ぎて生きている人は‘‘超生物”ですから、生物時代に得た免疫系の役立ち方を“超生物’’のところで説明しようと思っても、そんなの無理なんです。幸いなことに私達は、栄養もそうでしょうし、抗生物質ができた。抗生物質はすごい。なんといっても抗生物質。それから環境ですよね。恐ろしい寄生虫が周りにいなくなったわけですよ。
だから、バランスが少々崩れたって、残りのカスでもって私達は充分生きていける。残りカスをいかに利用していくか、というのが勝負なわけです。
や、残りカスっていったって、別に寂しいことじゃなくてね。これこそ“超生物’’の人間ですよ。
6.“超生物”の免疫力の強化には、脳を味方につけること。 ストレスコントロールができるかどうかが勝負です。
脳というのは、残念なことに、生物時代の30、40歳ぐらいまでの、生物としての人間にとってありえない行動をとります。自殺するとか、必要もないのに人を殺すとか、脳は、そんな困ったことをやるわけだけれど、ぼくらは脳を使って、“超生物’’時代にどうやって生きるか。
なんで脳の話を持ち出したかというと、ストレスが免疫に非常に相関しています。ストレスがあるために免疫力が落ちるからです。
それだけ免疫力に対してストレスが影響するということは、それだけ脳の働きが免疫力にかかわっているということです。ということは50歳以降の“ 超生物” にとってこれを利用しない手はない。
“超生物’’としては、大変な重荷の脳を、科学の進歩だの生活便利性だの経済の豊かさだのではなくて、もっと自分たち個人、自分が生きていくことに利用して使っていけるか、これからの大きな挑戦だと思いますね。
免疫もすごいんですけれども、脳のすごさは、これはもう、想像もつかない可能性ですよね。脳は、もともと限界を考えない。限界なんてないようなものなんでしょうね。ですから、ありえないことをやるわけでしょう。動物は必要だからやるだけですが、人間は努力することができる。脳はすごいんです。
生物時代から超生物時代を迎えられた原因というのは、脳です。
脳があったためにぼくらはすごく楽しいことがいっぱいある。昔の人に比べればより豊な生活になったといわれています。
ただし、昔にはなかった心身症がでてきましたね。 心身症の代表的疾患の関節リューマチ、これはストレスが影響する。ストレスで非常に悪くなる。甲状腺機能充進症とか、リューマチ、過敏性大腸炎、気管支喘息。いわゆる心身症の代表的疾患といわれているこの4つは、免疫が原因です。
免疫によって起こされる病気。SLE(全身性ループス)は典型的なものです。 離婚とか試験とか就職の時期になると、非常に精神の倦怠感を自覚症状として訴える人が多いですね。これは気分の問題ではなくて、実際に数値として現れます。血液検査をすると抗核抗体というものが上がっている。
SLEも関節リューマチも、関節の部位がストレスによって悪くなる。
進行ガンも調べてみると、奥さんがなくなった夫の例では、2ヶ月ぐらいはリンパ球の貪食反応が弱くなる。免疫細胞の機能が客観的に下がってくる。夫でも妻でも、配偶者の死というのはものすごく大変なストレスなんでしょうね。内分泌、神経、免疫の3つは同じ言葉を使っているといいましたが、内分泌で使ったステロイドホルモンというのは免疫でも働くし、脳神経にも働く。神経で使っている神経ペプチドというのも、内分泌でも働く。内分泌、神経、免疫の3つはいつも持ちつ持たれつという状況です。
コンピューターに例えると、胃や腸、心臓や血管、肺や膀脱、骨や筋力などがハードであれば、この3つは生きていくための言わば“ ソフト” です。外界の刺激や体内の恒常状態、バランスをとろうという作用です。ストレスがあると、非常に強いストレスホルモンが出て、免疫反応が抑制される。痛みもストレスですし、慢性ストレスというのも大変重要です。感情とかストレスというものは、免疫系にかかわってきます。
例えば、笑ったらNKが上がる。ガンになったら最後までポジティプに前向きで生きる人とそうでない人とはガンの進行、余命も違うとよく言われます。 老化とストレスですが、マウスの実験からすると、20歳の人に強烈なストレスを与えると80歳の人になっちゃうんですよ。もちろん、それは戻るのですが、少なくとも一時的にはそうなります。
だから、われわれみたいにかなり怪しくなった年代がストレスをずっと持ち続けて悪性ストレスになるとよくない。いかにストレスをコントロールすることが大事か、ということです。ぼくは、‘‘超生物”のもとである大脳皮質のところに注目したい。自分として意味があり、満足した生活をしていると、大脳皮質をいい状態にするんです。何といったって、何千万年前、何億年前の進化の過程から考えると、50歳を越えたら、ぼくらは絶対に不利なんですよ。
けれど、まったくダメかというと、この時代には考えられないことが今の時代にはあるのですね。今の時代というのは、“超生物’’として、大脳皮質、連合野、辺縁系を持っているわけです。大脳皮質で幸せになって長生きできるし、痛みを和らげることができる。もしかしたら、ガンだって進行を抑えたり、ガンに対する免疫をあげることができるかもしれない。証明はできませんよ。でも、ぼくは大事じゃないかなと思う。
7.50代から免疫力を強くする方法。お腹をすかせ、体を動かし、深く眠る、免疫系が進化してきた大昔の暮らしにもどろう。
結局、免疫作用ってものすごく複雑なんです。
血流の状態がまずいと、そこには充分な免疫反応が起こらない。血流の循環がいいかどうかは、免疫細胞が充分働けるかどうかにかかっているのです。
体全体の力を持って、生活習慣病などを防いでおけば、“超生物時代”だってまだ大丈夫。
加齢だって遺伝だって、そのこと自体はしかたがないけれど、免疫力が下がっていくのだったら、覚悟してそれに対応すればいいのです。つまり、免疫力を低下させる要因は避ければいい。
こういう実験があるんですよ。食事制限をしたマウスのほうがしなかったマウスより長生きをする。それは、生物時代はあまり食べ物がない時代でしょう。苦労して食べ物を見つけるわけで、お腹いっぱい食べるなんてことはないわけですよ。
50歳以上は“ 超生物” だといいましたけれど、肥満とか腹いっぱいとかは、おそらぐ超生物’’の状態です。生物時代には、瞬間的には腹いっぱいもあるでしょうけど、いつも腹いっぱいなんてことはないわけですから。 だからオチはね、‘‘超生物’’時代ではなくて、生物時代にもどったような生活をしましょう、ということ。そういう中で免疫系は進化してきたわけですから。
毎朝きちんと起きて、規則正しい生活をする。もう飽食なんて嫌でしょう。目が欲しいとかね。ぼくもよくありますけれど、あれは後悔しますよね。
最後に、免疫力をあげるにはどうすればよいか。つまらない結論ですが、適切な食生活でね。食べ過ぎたなとか、必要もないのに食べちゃったなとか思わないで、おいしいな、ありがたいなと思って満足する食生活をすることです。
免疫力を強くするには、運動は確かにいいですよ。これもメチャクチャな連動はまずいですけどね。適切な量の運動を常に定期的にやっている人は、やってない人に比べて、NK細胞の活性が高いというデータがあります。充分な睡眠というのは、単に長いということではなくて、質のよい睡眠がとること。自分で自覚できるようなはりのある生活をして、ストレスをコントロールすること。 こういうのが、”超生物” としてのボクらのやれる範囲です。そうすれば50歳から先も生きられる。
目標は老衰死ですよ。老衰で自然に全体でバランスをとりながら、でも最後は恒常性が維持できなくなる。
それで、いい人生だったなと終わるのが理想ですね。